これらの課題に対して、ドラッカー教授とクリステンセン教授の解決策は概ね一致しています。
・イノベーションに関わる仕事、特に新事業、製品、サービスの開発を目的とする仕事は既存の事業に責任を持つマネジメントのもとに置いてはならない。(イノベーションと起業家精神)
・破壊的技術(新市場を創造し古い市場を壊す革新的技術)を開発し、商品化するプロジェクトは、小さな機会や小さな勝利にも前向きになれる小さな組織に任せる。(イノベーションのジレンマ)
すなわち、イノベーションのための組織、新規事業のための組織を主力事業と異なる意思決定、評価システムに置く、資源配分や人事評価の仕組みを特別に設立するということです。
トップ直結の独立組織が有効
そのための有力な手段として、トップ直結の独立組織を作ることとともに、スピンオフ(小規模な単位で研究者やプロジェクトチームが社外に出ること)、カーブアウト(事業部門等を戦略的に切り出すこと)の実施があります。物理的、制度的、心理的に主力事業と切り離すことで、新しい挑戦に取り組みやすい組織ができ、社内で眠っていた技術やプロジェクトが花開く可能性が大きくなります。
しかし、新規事業開発の課題や解決策がわかっていても、実行に移すことができない企業が多いのが、前述の調査でも明らかになった現状の問題点です。
「ベンチャー創造協議会」では、このような問題に対応するため、スピンオフやカーブアウトの推進を図ります。
既に組織再編税制、産業革新機構の出資、前回解説した「目利き事業」による支援など、スピンオフ・カーブアウトを応援する施策はありますが、これらの活用促進と合わせて、企業同士でノウハウを共有したり、スピンオフ候補の受け皿となるプラットフォームを形成することを目指します。例えば、スピンオフをした新事業の支援チームの組織化や、退路を断ったスピンオフでない出向形態での独立新事業立ち上げスキームの検討などです。企業が経営戦略としてスピンオフ、カーブアウトに積極的に取り組めるように、また、スピンオフ、カーブアウトをする研究者やプロジェクトチームの障害をできるだけ取り除けるように、ベンチャー創造協議会の場を使った環境づくりができればと考えています。
イノベーションを次々と創出するベンチャーエコシステムを形成するためには、「ゼロから1」を作り出す人・組織と「1から10、10から100」に成長させる人・組織は異なるということを明確に認識し、それぞれの行動原理、仕組み、リスクを理解しつつ、企業同士が連携し、大企業が事業再編する環境を整えることが重要です。ベンチャー創造協議会はこのような考えのもと、大企業とベンチャーとの連携促進、大企業発のベンチャー創出を図っていきます。
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