ベンチャー騒然、金融庁ファンド規制の衝撃 DeNAのようなベンチャーが生まれなくなる?

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盛り上がるベンチャー投資に冷や水?(写真:ロイター/アフロ)

せっかく活気づいてきたベンチャーの生態系に、冷や水を浴びせる法案が突如持ち上がり、ベンチャー業界周辺は今、騒然となっています。

金融庁から5月14日に公表された「適格機関投資家等特例業務の見直しに係る政令・内閣府令案」がそれです。ここには、悪徳業者による詐欺被害を抑え込むためのファンドなどの規制の改正案が組み込まれていますが、今、これがそのまま施行されてしまうと、今後、日本の成長戦略の成功に大きくかかわる独立系ベンチャーキャピタルファンドの新たな組成・発展を著しく阻害しかねません。

また、これは一部のファンド業者のみの話ではありません。後述しますが、ベンチャーの生態系のみならず、日本経済にも多大な影響を与えかねないのです。

まじめなファンドも組成できなくなる

今回の改正を理解する前提に、2007年の金融商品取引法の改正があります。このとき、多くの人から資金を集めるファンドの募集については、原則として、登録を受けた「第二種金融商品取引業者」が行わなければならないことになりました。「第一種金融商品取引業者」がみなさんもご存じの「証券会社」ですので、証券会社に準ずる管理態勢が求められる「金融業者」にならないと原則としてファンドの募集ができなくなったわけです。

その際の例外が、今回の改正の対象となる「適格機関投資家等特例業務」でした。今までは、銀行や証券会社などの“プロの投資家”がファンドに出資しており、残り49人以内の一般投資家から資金を集める場合であれば、ある程度の信用が担保されていると判断できるため、「金融業者」にならなくてもいいことになっていました。

この制度で当初想定されていた使い方をすれば、出資先のファンドに対して、きちんとした審査をするプロの投資家が審査をするので、残りの49人までの投資家も安心できるわけです。しかし、今回の改正が検討されるに至ったのは、問題は「あまりちゃんとしていない」適格機関投資家から名目的に出資を受けて、この制度を悪用する業者がいたからです。

日本のベンチャー投資は年間1000億円前後しかないのに対し、国民生活センターなどに寄せられる未公開株詐欺やファンドなどのトラブルでの被害額は、その規模を上回ると言われています。

まじめなベンチャー投資が詐欺業者に資金量で負けるとは情けないかぎりの状況ですが、ベンチャーのことを理解しているごく少数の人から出資を受ける本来の投資と、ベンチャーをよく知らない大多数の人に虚偽の儲け話を持ちかけておカネを集めるのとでは、残念ながら後者のほうがはるかに容易、というのが、この数字の理由です。この被害の規模からしても、これは一刻も早く対処しなければならない大問題であることは間違いありません。

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