ベンチャー騒然、金融庁ファンド規制の衝撃

DeNAのようなベンチャーが生まれなくなる?

そのため、今回の改正案は、こうしたことに対応するため、適格機関投資家等特例業務において、プロ投資家以外で投資できる投資家を、

(1)上場会社
(2)資本金5000万円超の株式会社
(3)資産3億円以上の法人
(4)投資性金融資産を1億円以上保有しており、かつ証券口座開設後1年経過した個人

など、「一定の投資判断能力を有すると見込まれる者」に限定しようというものです。

しかし、もちろんこれで、悪徳業者の仕事がやりにくくなるのは確かかもしれませんが、これは同時に、まじめなベンチャーファンド業者の資金調達にも、多大な影響を与えることになります(特に、今後、新たに参入しようというベンチャースピリットにあふれた独立系のベンチャーキャピタリストに影響大です)。

たとえば、日本を代表する企業となったDeNAは創業期、村口和孝氏の運営する日本テクノロジーベンチャーパートナーズなどの出資に支えられたことは、多くの方がご存じのことと思います。その村口氏や、独立系の若手ベンチャーキャピタリストたちは、今回の規制案に対して「もし、この規制が自分たちの最初のファンド立ち上げ時に存在したら、ファンド自体作れなかっただろう」とおっしゃっています。

つまり、今みなさんにも身近なDeNAをはじめとする多くの企業が、こうした独立系ベンチャーキャピタルによる投資を受けて成長した企業も、ファンドの出資がなければ、現在、存在しなかったかもしれないわけで、もし今回の規制が通るなら、今後、日本経済への影響は計り知れないものがあります。

そもそも、日本のベンチャー生態系は四半世紀遅れ

米国では、ベンチャーキャピタルが日本円で年間3兆円規模の投資をしていることに加え、エンジェル(個人投資家)が年間2兆円以上のベンチャー投資をしています。これに対して日本では、ベンチャーキャピタル投資はたったの30分の1の1000億円前後。エンジェル投資はさらに、米国の200分の1未満(おそらく数十億円規模)しかありません。この両国の規制を同列に扱うことはまったくナンセンスです。

米国の証券自由化は1975年にすでに行われているのに対し、日本では1999年の証券自由化以降に現在のベンチャーの新しい流れが生まれてきて、まだ15年程度の歴史しかありません。米国カウフマン財団の助成を受けた調査では、米国のエンジェルの約85%は、M&Aなどで資金を手にした元経営者、つまりベンチャーについて人一倍詳しい人です。これに対して日本では、2000年以降のベンチャーのIPOやM&Aなどで、ベンチャーの経営に知見があって資金を持つ人が、やっと増えて来た段階なのです。

つまり残念ながら、日本はまだエンジェルも含めたベンチャーの資金調達環境は、米国(特にシリコンバレー)に大きく後れた「後進国」もいいところなのです(このグローバルな時代に外国に比べて四半世紀も後れている領域など、今どきなかなかありませんから、逆に考えれば、ここを伸ばせられれば、ものすごいポテンシャルがある領域だとも言えます)。

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