ベンチャー騒然、金融庁ファンド規制の衝撃 DeNAのようなベンチャーが生まれなくなる?

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米国では、純資産100万ドル以上、または年収20万ドル(夫婦で30万ドル)などの要件を満たす「accredited investor(適格投資家)」しかベンチャーやファンドへの投資ができません。しかし米国では、今回の日本の改正案のように、年収が一定額以上の人でも投資できないといった規制もありませんし、適格機関投資家の参加も求められません。

今回の改正案は、資産が1億円以上というところは米国のルールと同じに見えますが、米国より何十年もベンチャーの資金調達環境が後れているにもかかわらず、ある意味、米国以上に厳しい規制が導入されようとしているわけです。

また、いくら年収や資本金などの金額的な形式基準を設けても、詐欺を完全に防ぐことはできません。たとえ資産を5億円持っている人でも、ベンチャーのことをよく知らなければ、だまされる人はだまされてしまいます。

逆に、資産が8000万円しかなくても、ベンチャーを理解した人が500万円出資してくれることもあります。

重要なのは、ベンチャーや投資のリテラシーがある人に、そのリスク負担力に応じた投資をしてもらうこと(「適合性の原則」)であり、実際に、普通のベンチャーキャピタルでは、そうした人からの資金調達が行われています(逆に言えば、前述のとおり、ベンチャーや企業経営のリテラシーがある人でないと、なかなか出資はしてもらえないのです)。

このように厳しい規制を適用してしまったら、せっかくこの数年、盛り上がって来たベンチャーの活動にも悪影響を与えますし、安倍政権が打ち出している成長戦略にも真っ向から冷や水を浴びせるものになってしまいます。

日本で最も雇用を生んでいるのは設立5年未満の企業です。また、産業別に見ても、最も正社員を増やしているのはベンチャーが多いソフトウエア関連産業です。日本の最大の成長領域は「ベンチャー」なのです。

エンジェルにしかできない投資がある

ここまで読むと、「まじめなベンチャーキャピタルなら、わざわざ個人から集めなくても、ちゃんとした大企業や金融機関から資金調達すればいいじゃない?」と思う方もいるかもしれません。しかし、そうした大企業や金融機関は、組織的に意思決定をする必要があり、関心領域も狭めになりがちですし、意思決定に時間も(多くの場合数カ月も)かかってしまいます。実際、米国でも、投資委員会などの機関で意思決定をするベンチャーキャピタルの資金は、全米の50%もがシリコンバレーに集中しているのに対し、エンジェルの投資は同25%程度で、事業領域的にも広く分散された投資が行われています。

次ページでは、具体的にどうすべきか?
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