富士通の“不可解な事件”と経営トップ--トップの仕事は「部下の働き」を曇りなき目で見ること
秋草氏は、損益赤字化という事態という結果を招いたにもかかわらず、社長から会長になり、その後に取締役相談役になった。富士通の、少なくてもトップ人事や役員人事にずっと最強の影響力を行使してきたわけである。
今回、野副州旦前社長の“不可解な事件”に関連して、どうしたことか、秋草氏の名前が出てきた。取締役相談役から相談役に退くというのである。これは、やれやれ、というしかない。
“不可解な事件”の詳細は、ほかに譲るが、これだけは言えるのではないか。
日本の会社では、よい業績を残せなくても、いや業績を悪化させても、社長から会長、取締役相談役と、アメリカで言うCEO(経営最高責任者)を10年以上もやれるということになる。
これでは、なにもアメリカでなくても、つまり株主に主権がさほどない日本でも、“株主になりたくない会社”の要件を備えていることは間違いない。ともあれ、富士通という会社は、パソコンなど製品は決して悪くはないのだが、経営はドロドロというか、いつもすっきりとしたところがない。
負けた大将が出世することはありえない
富士通の経営のようなケースは、戦国期には成り立たなかったのではないか。
戦に負けたのは「部下の働きのせい」では、その大将に誰もついていかない。部下が働けるような作戦を立て、戦には勝たなければならない。負けるような戦をしただけで、誰もついてこなくなる。
戦では、部下の働きをつぶさに見ておかなければならない。それぞれの部下の働きをフェアに評価し、恩賞を与える。そうしないと次の戦さに誰もついていかない。部下も必死で旗指物を背負って、自分の働きをアピールするわけだが、大将もそれをしっかり見ることが最大の仕事になる。