茨城の老舗カフェがコロナに全然負けてない訳 サザコーヒーは次々にイベントを仕掛ける

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「最高級コーヒーとして知られる『パナマゲイシャ』の名前の由来は、品種の発祥地・エチオピアのゲシャ村(ゲシャビレッジ)から来ていますが、初めてゲイシャの品種名を聞く人は必ず、日本の芸者さんをイメージします。それなら『誤解を深めよう』と考えたのです」(鈴木社長)

誤解を解くのでなく、深める――という発想がユニークだが、本業である飲食の味で評価されないと、単なる話題性で終わってしまう。モノづくりあってのコトづくりなのだ。

本店には無料で見学できるギャラリーもある。3月31日から4月5日までは「グアテマラの織物展」を開催した。毎月第2土曜日には店内で「中南米音楽とコーヒートーク」も開催される。鈴木会長と飯田利男氏(元茨城放送アナウンサー)が登壇し、13年以上続く。

話題性のある仕掛けが得意な鈴木父子だが、父の会長は伝統や文化、息子の社長は流行や意外性が得意なように感じた。

「ゲイシャコーヒー」のイベントに登壇した駐日パナマ大使と芸者衆(写真:サザコーヒーホールディングス)

「美味しさ」にこだわり、「何かをやっている」店

サザコーヒーの商品は安くない。ドリンクとフード(またはスイーツ)を頼めば1000円を軽く超える。前述のコーヒー豆も、銘柄にさえこだわらなければ、スーパーでは3分の1以下で手に入るはずだ。それでもお客は、この店で飲食を楽しみ、コーヒー豆を買う。

1998年、コロンビアに自社直営のサザコーヒー農園を開設し、良質な豆を育ててきた鈴木会長は「サザの本気度が評価された」と語る。当時、その運営で南米に派遣されたのが現社長だ。ドリンクもスイーツもイベントも本気度があってこそ、深めたり広げたりもできる。

老舗とはいえ、歴史にあぐらをかくと淘汰される時代だ。飲食の味の追求に加えて、「ここに来れば何かをやっている」という新鮮さが、このご時世でも集客できる秘訣だ。

コロナ禍の状況は予断を許さない。しばらくは緊張感が続く。サザコーヒーはネット通販にも注力するが、決して安くない商品は、実店舗への信頼性があってこそ成り立つ。できることを手がけて売り上げを確保しながら、新たなヒットの芽を育てていくのだろう。

ポーランドの食器「ツェラミカ」(セラミカ)など、コーヒーはさまざまなカップで提供される(筆者撮影)
高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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