極右ユーチューバーが明かす「バズらせる手口」 アルゴリズムを味方に付けた男の自慢と後悔

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ところが、このうちチャンネル登録している視聴者の割合は3割にも満たなかった。サザンの人気が頂点に達していた2018年ですら、ユーチューブのアルゴリズムによって視聴者に自動でレコメンドされた後に再生されたものが、少なくとも全体の3割を占めていた。

オンライン哲学者というポジショニングのモリニューは、サザンが取り入れたような対立的な手法には手を出さなかった。ただ、ロバートソンが編集した動画には「民族主義者、すなわち極右の視聴者層が関心を持ちそうな極右思想」が忍び込ませてあったという。

2018年、モリニューはロバートソンとポーランドに赴き、「ポーランドには困難や争いがない」とする動画を制作した。「なぜなら、ポーランドは圧倒的に白人の国だからだ」というのが暗黙のメッセージだった。

モリニューはニューヨーク・タイムズの電子メール取材に対し、「ボディーガードを雇わなくてもいい国に滞在するのは気分がよかった」と答えた。そして、香港を訪れたときにも同じような気分を味わったことがある、と付け加えた。

「再生回数至上主義」から抜けられない

ロバートソンは2019年初頭には幻滅を感じるようになっていたと話した。そのころ、サザンのユーチューブチャンネルの再生回数は目立って落ちていた。これは、暴力をあおったり、デマを広めたりする動画の削除にユーチューブが力を入れ始めた時期とほぼ重なる。

2019年3月には、オーストラリア人男性がニュージーランドのクライストチャーチにある2カ所のモスク(イスラム教礼拝所)で銃を乱射し、51人を殺害する事件があった。ユーチューブ上で拡散されていた反移民思想が犯行を助長したとされるこの事件によって、ロバートソンは自らが制作した動画が2016年のゲイナイトクラブ乱射事件と同様の暴力を引き起こしていることに気がついたという。

「完全に一周し(て自分で自分の足を撃っていたことに気がつい)たっていうか」(ロバートソン)

現在、ロバートソンはバイライン・タイムズから派生した動画チャンネル「バイラインTV」を監修する立場だ。右派の過激思想に染まった人々の洗脳を解くことを目的とした新組織「フューチャー・オブ・フリーダム」も運営している。それでも彼は、今もユーチューブの再生回数をカウントし続けている。

ロバートソンは先日、ショートメッセージでこんな自慢を送りつけてきた。以前いっしょに働いていた陰謀論者のジョーンズを攻撃する動画を制作したところ、その再生回数が1日で25万回を突破したというのだ。

=敬称略=

(執筆:Cade Metz記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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