極右ユーチューバーが明かす「バズらせる手口」 アルゴリズムを味方に付けた男の自慢と後悔
サザンは「人をだまして自分たちのコンテンツを見るように仕向ける極右のおぞましいペテン」には関与していないとも述べた。「私たちは、ほかのユーチューバーと同じことをしているにすぎない」。
冒頭で紹介したローマの動画について、ニューヨーク・タイムズがロバートソンから提供された未編集映像を確認したところ、ロビンソンが脅されたという誤った印象を与えるように編集されていたことがわかった。未編集映像を通して見ると、意図的にトラブルの種を作り、黒人男性に危害を加えていたのはロビンソンのほうだった。
ロビンソンらの動画制作と配信を手伝った2年以上の期間に、ロバートソンは編集を狡猾に行い、対立シーンを前面に打ち出す手法の有効性を知った。こうした手法を使えば、ユーチューブなどのソーシャルメディアで何百万という再生回数をたたき出せることがわかったのである。ユーチューブのレコメンド(おすすめ)用アルゴリズムが、視聴者をさらに過激な動画へといざなう仕組みになっていることも見えてきた。
「だから私たちは、もっともっとヤバい動画を作るようになったってわけ」とロバートソン。
ユーチューブによる「洗脳」が事の始まり
ロバートソンはアイルランドで育ち、両親の離婚後、父親に連れられてイギリス北部の労働者階級が大部分を占める地域に移住した。自らがゲイであることはかなり早い段階で自覚しており、疎外感を味わうことが多かった。だが、同性愛者に対する露骨な嫌がらせに遭遇したのは、大学に通うために引っ越してきたロンドンで、イスラム系住民の多いイーストエンドを歩いていたときだったという。
2016年には過激派組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓うムスリムの男性がフロリダ州オーランドのゲイナイトクラブで銃を乱射し、49人を殺害、53人を負傷させる事件があった。その後、ロバートソンはイスラム教徒、中でも移民に激しい憎悪を募らせていく。憎悪の火に油を注いだのは、彼の説明によると、大部分がユーチューブで見た動画だった。
入り口はメジャーなメディアの動画だったというが、ユーチューブのおすすめ機能によってどんどんと過激な動画に導かれていった。その中には、ロビンソンのような極右活動家の動画も含まれていた。ロビンソンはネオ・ファシストと白人ナショナリストによる「イギリス国民党」の元党員。本名をスティーブン・ヤクスリー・レノンという。
2017年、ロバートソンはロビンソンに連絡を取り、間もなく彼の動画プロデューサーとして働くようになる。その年の終わりには、カナダの極右活動家サザンの動画制作にも協力するようになっていた。
翌年、ロバートソンとサザンは南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドまで足を伸ばし、似たような動画をいくつか制作した。ニューヨーク・タイムズが確認したアナリティクスの数字によれば、サザンのユーチューブチャンネルの総再生回数は6300万回を超えていた。