「交渉がうまい人」の有利な条件を引き出す技術 交渉はあえてリスクをとったほうがうまくいく
一方、Aさんも不安になってきているようです。Y社が12万ドルのオファーを取り下げて、ディポジションに応じてきたら、しばらく和解はできません。弁護士費用もかさみます。
「大橋さん、12万ドルのオファーを受け入れたほうがよいかもしれないですね」
しかし私は、ハッキリとAさんに伝えました。
「もう少し強気の姿勢を貫けば、Y社は支払い金額を増額してくるはずです。ここは我慢比べです。リスクを負いましょう」
案の定、ディポジションの数日前になって、Y社の弁護士から連絡がありました。
「ディポジションをしないで和解に応じるなら、22万ドルを支払う」
やった! 一気に10万ドルの増額です。Y社は白旗を掲げているのも同然。もっともX社の提供したコンサルティング・サービスも完璧だったわけではなく、若干の不手際はありました。
「Aさん、このケースで22万ドルを支払ってくれるのなら、御の字です。受け入れてもよいのではないでしょうか」
「大橋さん、そうですね。社内でも話し合いましたが、受け入れることにいたしました。和解をファイナライズして(仕上げて)ください」
結局X社はこの金額を受け入れて一件落着となりました。12万ドルのオファーを蹴り、「ディポジションのスケジュールをして、プレッシャーを与えることにより、相手に折れさせよう」「相手が折れなければ裁判をとことん続けざるをえなくなるかもしれないけれど、それでも構わない」というリスクを負ったことが、22万ドルでの和解につながったのです。
失敗してもいい小さな交渉で練習する
もちろん、リスクを負って失敗することもあります。
以前にスポーツクラブに入るべく、事務所のそばにあるスポーツクラブでマネージャーと交渉したときのことです。入ろうと決めたスポーツクラブは、マンハッタンを中心にニューヨーク中にジムを配している有名なスポーツクラブ。
いったん会員になると、どこのジムを使おうと追加料金はかからないことを売りにしています。各ジムが営業成績を競っているようで、それぞれの営業担当者に一度話を聞くと、その後、自分を通じて入会してもらおうと必死にアプローチをしてきます。
当然、私はいくつかのジムを回り、「あっちのジムは『入会金〇〇ドル、月〇〇ドル』と言っている。月〇〇ドルまで下げてくれないと、あなたと契約するメリットがないよ」などと言いながら、ベストプライスまでこぎ着けるつもりでいました。
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