志尊淳が発症した「心筋炎」の知られざる恐怖 風邪と似た症状、新型コロナが引き起こす事も

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医師としては、風邪のような症状でも、発熱のほかに脈拍異常や低血圧、心音の異常、肺の異常音、頸静脈の拡張、脚のむくみなどの兆候がないか、慎重を期すべきと心がけている。新型コロナが流行している今であれば、合併症としての心筋炎を念頭に検査が行われ、早期に診断が下されるケースは増えるかもしれない。

ただ、「心筋炎」との診断がついても、それで安心はできない。新型コロナと同様、特効薬などの根治療法がないためだ。つまり、患者自身の回復力で何とか克服するしかない。医療はその手助けしかできない。

心不全や不整脈に対し、対症療法を行っていく。心不全に対しては強心剤や利尿剤などの薬物療法や、状態により人工呼吸器を使用して、心臓の働きを助ける。心臓の機能が大幅に低下した場合は、人工心肺装置(ECMOなど)を使うこともある。一般的には、炎症期が1~2週間続き、その後に回復期に入る。

ごく軽症の場合も、急変の可能性を考えて入院し、慎重に経過を観察することが大切だ。

なお、ガイドラインでは、発熱に対してNSAIDs(イブプロフェンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬。アセトアミノフェンは該当しない)と呼ばれるタイプの鎮痛・解熱薬の使用を避けることとしている。インフルエンザや新型コロナなどのウイルス感染時には、症状を悪化させるのでは、という議論があるためだろう。

一生ケアを必要とする「後遺症」が残る人も

さて、回復してもまだ心配がある。心臓へのダメージが残ってしまう人がいることだ。

心臓の収縮力が低下する例もあるし、不整脈が残ることもある。そうした場合は、薬物療法を続けたりペースメーカーを入れたりと、一生にわたって治療が必要となる。

医師でも診断が困難なところ、受診すべきかどうか患者さん自身や家族が判断するのはさらに難しいことと思う。だが、発熱に加えてひどいだるさやめまい、立ちくらみ、息苦しさなど、「風邪にしてはひどすぎる」と感じたら、迷わず受診していただきたい。心筋炎に限らず、腎盂腎炎など風邪に似ているが放置すべきでない病も、ほかにいくらでもある。

新型コロナの流行が続く中、今も受診に抵抗感のある人もいるだろう。だが、わざわざ足を運んで「風邪」で済めば、それこそラッキーと思うべきかもしれない。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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