志尊淳が発症した「心筋炎」の知られざる恐怖 風邪と似た症状、新型コロナが引き起こす事も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

彼らの心筋炎の症状としては、全員に発熱があり、平均3日間、最長1週間続いた。胃痛や下痢、嘔吐といった消化器障害が8人(89%)、肺浸潤(肺の細胞に血液や膿などがしみ出した状態)も8人(89%)、呼吸困難が5人(56%)に見られた。

しかも患者たちは入院後に急速に症状が悪化し、1~6日目(平均2.9日)に8人(89%)ICUに移送された。8人(89%)が投薬治療を受け、2人(22%)は人工心肺装置を装着した。その後は多くの患者が急速に回復し、ICUの滞在期間は2〜25日(平均9日)だったという。

風邪と見分けがつかず、突然死も…

志尊淳さんの例でも、新型コロナ後の合併症例でもそうだが、心筋炎の初期症状はごく普通の風邪とそっくりだ。

「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」でも、多くの患者で、寒気や発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの「かぜ様症状」や、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢などの消化器症状が先行するとしている。

その後、数時間~数日で心臓の異常を示す症状が現れてくる。70%に心不全の兆候、44%に胸の痛み、25%に脈拍異常が見られる。そうなればいよいよ心筋炎の疑いは高まるが、血液検査でもウイルス検出は困難だ。心電図や超音波(心エコー)、MRIなども行い、他の疾患の可能性を排除したうえで総合的に診断するしかない。

ただ、風邪に似た初期の段階で、一般に頻度の低い「心筋炎」を疑ってわざわざ検査をするだろうか。正直、よっぽどの所見がなければそこまでしない医療機関が普通だと思う。だが、自宅や医療機関で様子を見るうちに急に不整脈が生じ、よくわからないままに突然死に至ってしまうことはあるのだ。

National Library of Medicineの40歳以下の突然死を調べた研究では、20~29歳では心不全による死亡の22%が心筋炎だった。また、症状が急激に進行するタイプの心筋炎では、急性期死亡率は40.4%に上っている

一方で、無症状あるいは軽症のまま自然に回復する患者も多いと見られている(そのため実際の患者数は把握できず、厳密な統計データも存在しない)。

要するに、初期の診断が極めて難しいのが心筋炎の怖いところだ。

次ページ一生ケアを必要とする「後遺症」が残る人も
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事