「ウルトラQ」に2021年の中高年がハマる理由 大人が月曜夜に愉しむ「昭和ダークネス」の魅力

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番組の魅力の第1は「4Kリマスター」の成功である。もともと『ウルトラQ』は、通常の映画と同じ35ミリフィルムで撮影されていたため、今回の「4Kリマスター」によって、かなり美しく見やすい映像になったと考えられる。

それでいて、カラー化はせずモノクロのまま放映されていることも、他の番組と一線を画す異次元感が醸し出されて、またいい感じである。ハイビジョンの高精細な画面に映し出される「美しく見やすいモノクロ映像」は、月曜日の夜という絶妙なタイミングに持ってこいの癒やしになっている。

『ウルトラQ』の魅力の2つ目は、円谷プロお得意の特撮映像だ。もちろん現代のCG(コンピューター・グラフィックス)とは比べるべくもないが、逆に言えば、アナログ/手作業の世界で、どのようにして撮影・編集したのだろうと思わせる魅惑的な映像が、あちこちで見られる。

『ウルトラQ』の魅力の本質

思い出したのは、ジャンルも時代も違うが、発売40周年ということで3月に盛り上がった大滝詠一の名作アルバム『A LONG VACATION』である。丁寧に丁寧にアナログ/手作業で作られた「ナイアガラ・サウンド」に感じる「人力のすごみ」を、私は『ウルトラQ』にも感じるのだ。

もう少し近いジャンルに戻せば、昭和40年代の広告界を席巻した、演出家・杉山登志による資生堂の一連のCMである。貧弱な機材しかない中で、いかに世界的で映画的な動画を作り出すかへの挑戦。円谷プロの挑戦は、杉山登志や大滝詠一のそれと通じるものがあると考える。

しかし『ウルトラQ』の魅力の本質は、やはりストーリーにある。そのキーワードとして私は「昭和ダークネス」という言葉を掲げたい。

最近は「昭和ブーム」とのことで、例えば「昭和歌謡」などが流行っているが、そのとき「昭和」の枕詞として「あの、日本が元気で、底抜けに明るかった時代」的な、言わば「昭和ハピネス」の文脈が置かれることが多い。その「昭和」に産湯を使った人間として、安易な「昭和ハピネス」への違和感は、日に日に増している。

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