「ウルトラQ」に2021年の中高年がハマる理由

大人が月曜夜に愉しむ「昭和ダークネス」の魅力

対義語としての「昭和ダークネス」の記憶は数多くあるが、1つだけ挙げれば、「光化学スモッグ」だ。昭和40年代後半の大阪の小学校では、「光化学スモッグ」なる大気汚染現象に襲われて、楽しみにしていた校庭での体育の授業が、突如中止になったりしたものだ。

『ウルトラQ』は「昭和ダークネス」に徹底的に根差している。単なる子ども番組ではなく、大人にも向けられた切っ先鋭い社会派ドラマとしての側面を持っている。

例えばすでに放送された第1話「ゴメスを倒せ!」。『ウルトラ特撮PERFECT MOOK vol.06 ウルトラQ』(講談社。以下の怪獣の解説も同書から)によれば、ゴメスという怪獣は「東海弾丸道路の第三工区付近に出現した原始哺乳類」。

「東海弾丸道路」とは、当時建設中の東名高速道路のことと思われ、現代の自然開発/破壊に対して、原始からの怪獣が反旗を翻すという構図になっている。文芸評論家の小野俊太郎は『ウルトラQの精神史』(彩流社)において、「ここで人工物と自然とが交差するだけでなく、現代と古代とが交差するのだ」と記している。

「青葉くるみ」と太平洋戦争との関係

また、こちらも放送済みの第2話「五郎とゴロー」に出てきた、巨大化した野猿のゴローは「『青葉くるみ』を食べた日本猿が巨大化した姿」なのだが、ストーリーに深みを持たせるのは、この「青葉くるみ」と太平洋戦争との関係だ。

小野俊太郎は先の著書で「青葉くるみ」について、「『戦時中兵隊の体力増強に使った』と説明されるので、『覚醒剤』と同じ働きをしたことがわかる」と看破し、「淡島の野猿が、ゴローという大猿に変貌した背後に旧日本軍の影があるわけだ」と言い切る。

この第2話は、エンディングも凄絶だった。巨大化したゴローに睡眠薬を投じ、ゴローは街中でいびきをかいて寝てしまうのだが、そこでバッサリと終わってしまったのだ。

悪意なく、単に「青葉くるみ」を食べて巨大化してしまっただけのゴローに対して、何の救いもない、冷徹すぎる最後ではないかと思いつつ、子ども向けだからといって、柔らかい情緒にくるまず、むき出しで終わるスタンスは、併せて爽快な感覚をもたらした。

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