「ウルトラQ」に2021年の中高年がハマる理由 大人が月曜夜に愉しむ「昭和ダークネス」の魅力

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今後も「昭和ダークネス」が生み出した、さまざまな怪獣が出てくるようだ。例えば、ペギラ(第14話「東京氷河期」に登場)という怪獣は「原子力発電所が爆発し、その影響で南極の気温が上昇したため、北極に移動する途中、日本に出現した」という、昭和に発端のある原発問題と地球温暖化を予見したような存在。

また、有名なカネゴンも「拝金主義の人間がなるといわれている"守銭奴の権化"」「小銭を栄養源としており、左胸のレジスターに表示された金額が0になると命を落とす」と、よく読めば、一時期の「エコノミック・アニマル」を地で行くキャラクターである。

さらにケムール人は「2020年という未来の時間を有する惑星の宇宙人。医学の驚異的な発達により500歳もの寿命を得たが、自身らの肉体が老化したため、代わりに(註:1966年当時の)人類の肉体を狙った」と、まるで「人生100年時代」と盛り上がる、2021年のわれわれの生き写しのような怪獣だ。

現代は『ウルトラQ』の世界?

私にとって「昭和ダークネス」の切り口が興味深いのは、1つには、先の光化学スモッグのようなダークな記憶を呼び起こすからであり、そしてもう1つは、それら「昭和ダークネス」の多くは、「令和ダークネス」として現在にも続く問題への警鐘となるからである。

『ウルトラ特撮PERFECT MOOK vol.06 ウルトラQ』の中で、評論家の切通理作は「『ウルトラQ』は当初、『UNBALANCE』という番組タイトルだった。この世界のバランスが崩れた時、何かが起こる……。それを、特撮技術を駆使して視覚化して見せたのだった」と語っている。

「この世界のバランスが崩れた時」――それは、新型コロナウイルスに覆われた、今まさにこの世界である。私たちは今、『ウルトラQ』の世界を生きているのだ。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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