(第13回)経済「誤」運営で損失 なんと100兆円ナリ

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 しかも、次の意味で、さらに問題なのだ。金融機関の損失や公的資金の国民負担は、国全体としての損失ではない。金融機関や納税者が損失を被ったのは事実だが、借金の返済から免れた人は利益を得ている。これらは相殺するので、国全体のネットの損失は、ずっと小さい。

しかし、今回の対外純資産の損失は、日本国民全体としての損失である。もちろん、世界全体を見れば、利益を得た国がある。日本の対外資産の大半はアメリカに対するものなので、利益を受けた国は、アメリカだ。アメリカは、いわば、合法的に債務を逃れたことになる。

今回の事件はしばしば「史上最大のデフォルト」と言われるが、事実そのとおりだと言わざるをえない。「日本がカモだ」とは、このような意味だ。

なお、アメリカに対するもう一つの資産大国中国は、人民元の対ドルレートを08年以降、1ドル=6・8元に固定しているので、これまでのところ、こうした巨額の評価損は生じていない(今後、元の切り上げを行えば、生じる)。

経済運営の責任を追及すべきだが…

「100兆円の損失」といっても、あまりに大きすぎて実感がわかない。そこで、日本人1人当たりに直してみると、大略100万円になる。5人世帯なら500万円だ。これは、暗算でもできる計算だが、あまりに異常な結果なので、もしや間違ってはいまいかと、何度も検算した。残念ながら、計算は間違っていない。

ただし、これがどういう形で今後の国民生活に影響するのかは、はっきりわからない。そもそも資産の評価損は、身近で発生しても、なかなか実感できないのである。

たとえば、地価下落で自宅宅地の評価が下がったとしよう。売却すれば損失が生じたとわかるが、住み続けるかぎり、数千万円の損失でも普通の人は気にしない。寿司屋で10万円請求されるほうが、よほど損失感が大きい。対外資産評価損は国全体のものなので、さらにわかりにくいのだ。

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