「若者の焼きそば離れ」対応? エースコックが成功したワケ!《それゆけ!カナモリさん》

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 つまり、従来の商品はカップ焼きそばのユーザー層を固定化する形状であるわけだ。まるか食品の「ペヤング」という商品に代表されるように、カップ焼きそばは本来、「ヤング」がターゲットの商品であったのだ。それが、いつしか若者のニーズに合わなくなって、「若者が離れた」のではなく、「若者が手を出さなくなっていた」のである。

 「JANJANソースやきそば」の意義深いところは、ターゲット層とする若者の「ニーズギャップ」を徹底して解消したことだ。

 前述のPCを操作しながらの食用スタイルを実現したのもその一例。また、従来は容器の形状から、「ランチ焼きそばです!」ということがバレバレな感じだったが、20代女性が「オフィスでも食べやすそう」というコメントをしている。商品容量は膨満感防止のために85gに抑え、しっかりとした味付けや具材に黒こしょうのスパイスを加え満足感を高めている。一方、歯に付くと敬遠されがちな青のりはあえて外すという細かな工夫もこらしている。

 ユーザーが固定されていれば、加齢と共にボリュームや味についていけなくなった者が櫛の歯が欠けるようにぽろぽろとこぼれ落ちていく。それは、焼きそばだけではなく、高齢化社会においては多くの商材で同様な問題を引き起こす。それを埋める若者層の取り込みを、「若者のカップ焼きそば離れ」などという短絡思考でとらえ、真のニーズギャップを解決しなければ問題は解決しない。

 従来の常識を打ち破るチャレンジは、「トライアル、リピートともに順調」(前掲oricon記事)と同社がコメントするとおりの成功をおさめている。同社はすでに第2弾も準備しているという。「消費しない若者」と嘆く前に、何が起きているのか問題をよく見極める。消費者を観察する。ニーズギャップを埋める。世の中の“トレンド”を鵜呑みにしないことのメリットは大きい。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年4月23日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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