腸の専門医が「過度な糖質制限」に警鐘鳴らす訳 「糖質制限食与えたマウス」ほど老化が進行した
現在、メタボや糖尿病にかかるリスクとして問題となっているのは、食後に血液中の糖分が高くなること、つまり高血糖状態になることです。そこで、食後高血糖にならないために糖質を制限するのが、最近の糖尿病の食事療法の傾向です。
これに関連して、根強い人気があるのが「糖質制限ダイエット」です。以前から、私はこのダイエット法の流行に警鐘を鳴らしてきました。重度の糖尿病の患者さんが、食後高血糖を予防するために糖質を制限するのならわかるのですが、重度でもない人や健常な人が、糖質を極端に制限するのは大いに考えものです。
みなさんもよくご存じのように、糖質が含まれる食べ物(ご飯やパン、麺類などの主食やいも類、果物など)の摂取は控えるが、肉類などのたんぱく質や脂質、糖質の低いアルコールは摂取しても大丈夫、というのが糖質制限ダイエットです。
「糖質を減らす」と体はどうなるのか?
ヒトの体は糖質の摂取を減らすとエネルギー不足になり、脂肪を分解するなどして補おうとします。だから体脂肪が減り、体重も落ちるというのが、この糖質制限ダイエットのしくみです。
また、糖質は血糖値を上昇させる働きがありますが、血糖値が上がると、それを下げるホルモンであるインスリンが分泌され、筋肉などに取り込み、余った糖を脂肪に変えて蓄えます。そのため糖質を制限すれば、インスリンの分泌が抑えられ、高血糖になるのを抑えられるだけでなく、太りにくくなるのです。
一方で、食事から糖質(炭水化物)をとらなくても、肝臓は必要に応じて、筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生(体内で糖を作り出す働き)を行い、血中にブドウ糖を供給することができます。
つまり、糖質を抜いてもブドウ糖(グルコース)を体内に供給できる働きがあるのです。さらに、エネルギー源として脂肪酸からケトン体を作り出すしくみもあります。
そこで、糖質制限ダイエットをして糖分をとらなくても大丈夫であり、その分、肉類などのたんぱく質や脂質、あるいは糖質が少ないアルコールならいくら摂取してもよいという理屈になるわけです。
では、糖質が多く含まれる食べ物は不要かというと、そう単純な話ではありません。糖質は、三大栄養素の一つであり、炭水化物に含まれる成分ですが、炭水化物には糖質以外に食物繊維も含まれています。糖質制限で炭水化物をとらなくなると、その分、食物繊維の摂取量が減ってしまうのです。