腸の専門医が「過度な糖質制限」に警鐘鳴らす訳 「糖質制限食与えたマウス」ほど老化が進行した
食物繊維の摂取量が減少すると腸内環境が悪化し、さまざまな腸の症状を引き起こす前段階である「腸ストレス」を招いてしまいます。そして、腸の障害だけでなく、全身の不調に結びつきやすくなるのです。
さらに糖質制限ダイエットでは、炭水化物をとらない代わりに肉類やアルコール摂取が過度となり、大腸がんなどのリスク増加につながることも見落とされています。
それらのことから総合すると、糖質を制限する食生活は、腸にとっていいことはまったくないのです。
重度の糖尿病などで血糖値のコントロール不良の人はやむを得ない面があるとしても、そうでない人は決してすすめられたものではありません。
過度の糖質制限は脳や全身の老化を早める
医学的にも、長期にわたって糖質制限を行った場合の効果や安全性は必ずしも明らかになっておらず、むしろさまざまなリスクが指摘されています。
たとえば、日本糖尿病学会の指摘では、デンマークでの報告として、糖質制限ダイエットを長期間にわたって実行した結果、脳梗塞などの発症に結びつく可能性が紹介されています。
また、「過度の糖質制限は脳や全身の老化を早める」という研究報告もあります。東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らは、マウスを20匹ずつの二つのグループに分け、片方には「通常食」、もう片方には炭水化物を脂質とたんぱく質に置き換えた「糖質制限食」を与えました。
その結果、糖質制限食を食べたマウスのグループは、通常食のグループに比べて、老化の進行が30%早く、平均寿命も20〜25%短命で、しかも学習記憶能力の面でも機能が低下していました。
脳の老化を促進させる過酸化脂質の量を調べてみると、通常食群に比べて50%近く多いこともわかったのです。二つのグループの数値の差は、決して小さいものではありません。もちろん、これはマウスを使った実験結果ですが、人間にも当てはまるとしたら怖くなります。
さらに、米国ハーバード大学の研究チームは、こんな報告をしています。25年間にわたって、45〜64歳の約1万5000人のアメリカ人を追跡調査し、炭水化物の摂取割合別の死亡数を集計しました。それによると、総摂取カロリーに占める炭水化物の割合が50〜55%のときにもっとも死亡率が低く、それより多くても少なくても死亡率が上昇することが明らかになりました。
ほかの調査でも同様の傾向が見られ、簡単にまとめるなら、炭水化物(糖質)はとり過ぎても制限し過ぎても健康にはよくなく、偏食を避けてほどほどにとるのが一番ということになります。
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