なぜ日本はマスク好き?その意外な歴史的背景 140年以上前にすでにファッションアイテム化
マスクの原型が登場したのは1836年
科学史・医学史の領域で研究を続けてきた住田氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、マスクの歴史を調べ始めた。その時点でマスクの歴史に関する研究は、日本はもとより世界を見てもほとんどなかったという。そのため、過去の新聞や雑誌、小説、民俗について書かれた書籍などを片っ端から調べて、マスクに関する情報を丹念に集めることから研究は始まった。
「現在のマスクに直接つながるものが現れたのは1836年です。イギリスのジェフリーズという医師が、呼吸器疾患の人のための『レスピレーター(呼吸器)』として開発しました。これは今、私たちが使っているマスクと同じような形状で、鼻と口を布で覆い、両端に付けられた紐を耳にかけて使っていました。
ただし、中には格子状の金属が入っていて、息を吐くとそこで温度や湿度が保たれ、温かく湿った空気を吸うことができるという仕組みです。1862年の第2回ロンドン万国博覧会にも出品されています。
そのレスピレーターが1877年頃までに日本に入ってきました。少なくとも、1879年のレスピレーターの広告が資料として残っています。医療者や患者を対象としたものではなく、一般の人向けのもので、色は黒でした。東京など都会でのファッションアイテムとして人気を博しました」
意外なことに、140年以上も前の日本でマスクはトレンドアイテムだったのだ。
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