端的に言えば、日米の安全保障関係者がもっとも警戒しているのは台湾海峡だろう。今年7月の「中国共産党100周年」と来年2月4日に開幕予定の「北京冬季五輪」という2つのビッグイベントが終わるまでは大丈夫だろうが、それを過ぎたら「台湾有事」の可能性が否定できなくなる。「文革世代」である習近平氏は、たぶん「中台統一」の夢を捨てきれない。そしてすでに香港を完全に支配下においた中国共産党にとって、次なる目標はほかには考えられない。
次に台湾海峡に危機が来たら「中国の勝利」?
インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ海軍大将は、3月23日に上院軍事委員会の公聴会において、中国による台湾への軍事侵攻は「最大の懸念」「予想より近い」との見解を示している。
かつて1996年の台湾海峡危機の際には、米軍が2隻の空母を送った途端に当時の江沢民政権は沈黙した。今は中国側も空母を有するうえに、巡航ミサイルや潜水艦を配備している。米軍が実施する「台湾防衛」のシミュレーションでは、何度も「中国人民解放軍の勝ち」という結果が出ていると仄聞している。となれば、急いで日米の防衛協力を固めなければならない。「尖閣諸島の防衛」についてアメリカ側がコミットしてくれているのは、単なるサービスではないのである。
今回の日米首脳会談は、キャッチフレーズ的に言えば「対面で、対中で、対等の日米関係」ということになるだろう。基本的には3月16日に東京で行われた「日米2+2」の内容を、首脳間で上書きすることになるはずだ。
すなわち台湾海峡の平和と安定の重要性、香港および新疆ウイグル自治区の人権状況への懸念の共有など、対中関係で踏み込んだ内容になるものとみられる。もはや対ソ冷戦時代は遠く、日米同盟は完全に「対中警戒」モードとなっている。そしてこの間に、アメリカの同盟国としての日本の地位は向上した。が、それはアメリカの威信(自信?)低下の裏返しでもある。
トランプ大統領の時代には、アメリカは勝手に単独で中国や北朝鮮に対してけんかを売ってくれた。日本はいちいち相談を受けることもなく、いわば無責任な立場に居ることができた。それがバイデン政権になると、同盟国に仁義を切ったうえで対中共闘の構図を作ろうとする。考えようによっては怖い話で、日本の責任は重大である。
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