ミャンマー虐殺、日本政府の対応に広がる失望 日本はアジアの人権侵害にどう向き合うのか

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ミャンマーに限らず、アジア諸国で民主化に逆行する事態や大規模な人権侵害が起きた際、日本はこれまでも人権を侵害された側に寄り添うより、相手政府に宥和的な姿勢をとってきた。

クーデターで民選の政府がひっくり返されたり、野党勢力が理不尽で暴力的な弾圧にあったりしても、通り一遍の「懸念」や「遺憾」の意を表明し、お茶を濁してきた。時が経てば何事もなかったかのように遇してきた。

ミャンマー国軍に厳しく対応すれば、中国寄りになる、進出した日本企業に累が及ぶ。太平洋戦争時に迷惑をかけた負い目から強く出られないなど、いろいろな理屈はあろう。

しかし今回について言えば、ミャンマー国民に広がる強烈な反中感情でその中国にさえ戸惑いが見え、欧米企業は本国からさらに強い縛りをかけられる可能性がある。それらを勘案すれば、日本政府が国軍に明確な措置を取らない理由は見当たらない。

あるとすれば、一部関係者の利害にからむものではないのか。国軍とのパイプをつなぐことにより、現地で活動がしやすくなる一部政治家や外交関係者、企業などへの配慮である。

技能実習生と二重写しに

日本政府の対応とミャンマー国民の反応を見るとき、状況はまったく異なるものの、私にはベトナムから日本にやってくる若い労働者たちの苦境が重なって見える。

外国から「現代の奴隷制度」とまで批判されている技能実習制度によりブローカーに巨額の借金を背負わされたり、滞在資格を得るためだけに日本語学校に授業料という名の高額な「ビザ代」を支払わされたりしている若者たちの存在だ。

日本政府が労働者としてきちんと受け入れる態勢を作りさえすれば、不当な利益を得るブローカーや悪質な日本語学校などは排除される。ところが現行制度を維持することで、ブローカーや一部悪質な監理団体、一部の日本語学校の利権が守られる。その結果、借金苦の中で労働者としての権利も十分に守られず、多くの若者らが失望し、日本に恨みに近い感情を抱いて帰国する……。

東南アジアの人々が寄せてくれる親日感情や日本へのあこがれは、多くの日本企業、従業員らが積み重ねてきた製品づくりや職業倫理への評価、アニメなどのソフトパワーを含む民間の努力によって培われてきた結果だ。ODAや援助団体の活動などの意味もあった。いずれにせよ日本国民が長年かけて築いた財産だ。

それが一部関係者の利益を優先させる日本政府のあいまいな姿勢や不作為によって毀損され、失望が広がるとすれば、日本の将来にとって大きな損失である。

ミャンマーの国民から、アジアの若者から日本はどう見えているのか。視点をずらすことの大切さを思う。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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