「家族11人殺された」ロヒンギャ少年の悲劇 被害難民が語るミャンマー軍の過酷な弾圧
ミャンマー西部ラカイン州のイスラム系少数民族ロヒンギャが8月下旬以降、弾圧を逃れて隣国バングラデシュに流入し、難民の数が3カ月足らずで約62万人(11月15日現在)に達する非常事態が続いている。
ロヒンギャ難民がひしめくように暮らすバングラデシュ南東部コックスバザール県の通称“メガキャンプ”を訪ねると、「ミャンマー政府軍兵士に家族を殺された」という証言が数多く聞かれ、銃創や切創のある負傷者も少なくなかった。ミャンマー政府は国際社会の批判に反発しているが、大規模な人権侵害があったことに疑いの余地はない。
丘陵を覆い尽くす無数のテント
見たこともない不思議な風景だった。ビニールを継ぎはぎした無数の粗末なテントが見渡す限り丘陵を覆い、狭い通路を人々が行き交っている。悲惨な難民キャンプなのだが、どこか現実味がなく、「スター・ウォーズ」か何かに出てくる想像上の都市のようにも見える。
コックスバザール県のメガキャンプは、既存のクトゥパロン、バルカリ両キャンプ一帯に難民が押し寄せ、1つの巨大なキャンプが形成されたものだ。ロヒンギャ難民は1990年代から繰り返し発生し、もともと20万~30万人がこの地域に居住していたので、8月以降の新たな流入と合わせて約90万人がほぼ数キロ四方に密集していることになる。これは山梨県の人口を上回る。
「ミャンマー軍が家々を焼き払ってしまい、母親と妻、3人の子どもたちを連れて着の身着のまま3日間歩いて国境を越えた。ミャンマーでは移動の自由さえ認められず、軍の兵士は横柄で、私たちは人間扱いされていなかった」。ラカイン州モンド地区から9月上旬に逃れてきた日雇い労働者、ロヒム・ウア(25)は薄暗いテントの中で話した。
支給された鍋や水差しなどがある以外、家財道具は見当たらず、避難の最中に生まれた赤ん坊が揺りかごで眠っている。「ここでは国連やNGOからコメや豆、食用油、古着などをもらえるけど、食料配給は不定期だし量も十分じゃない。もっと困っているのは住居とトイレかな」。
キャンプで今いちばん問題になっているのは、そのトイレである。難民流入の初期対応として深さ30cmほどのコンクリート製仮設トイレが大量に設置されたが、すぐに使えなくなってしまい、しかもトイレの多くが井戸に近接して設けられたため衛生状態は劣悪だ。特に低地では排泄物やゴミ、腐った水たまりの悪臭が混じり合って漂っている。砂質土のため雨が降るとドロドロにぬかるみ、乾燥すると砂ボコリが舞う。
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