ロヒンギャ難民50万人超「集団感染」の危機 現地入りした医師が見た悲惨な難民キャンプ
ミャンマー西部ラカイン州に居住するイスラム系少数民族ロヒンギャが今年8月下旬以降、弾圧を逃れて隣国バングラデシュに流入し、国連機関よると難民が1カ月半で約54万人(10月13日現在)に上る緊急事態に陥っている。バングラデシュ側の難民キャンプで医療支援活動を展開する国際NGO「国境なき医師団(MSF)日本」会長の加藤寛幸医師に現地の状況を聞いた。
劣悪な衛生状態、食糧も水もない
――難民キャンプの現状は。
医療支援のニーズ調査のために9月中旬に現地に入り、10月1日にバングラデシュ南東端コックスバザール県のマイナゴナに診療所を開設した。このエリアにはクトゥパロン、バルカリという既存のキャンプがあり、数十万人のロヒンギャ難民がいたが、新たに50万人超が流入し、数キロ四方の“メガキャンプ”が形成されている。バングラデシュ政府軍が国境を越えた難民をトラックでキャンプに集めている。
難民たちは20カ所近い山中のエントリーポイントを通って越境してくるほか、一部は小舟で国境のナフ川を渡ってくる。みな着の身着のまま、何日も食べておらず憔悴しきっている。自分たちの身に何が起きているのかも理解できていない印象を受けた。たいてい家族単位で逃れてくるが、全体を見ると20~40代の女性と子どもたちが多い印象で、「ミャンマー軍に村を焼かれ、男たちは殺された」と訴える難民もいる。
キャンプの環境は劣悪だ。住居やトイレ、食料、飲料水など何もかも不足している。難民たちは自分たちで工面した竹の柱にビニールシートを張っただけの粗末なシェルターで雨風をしのいでいる。急ごしらえの手掘り井戸は清潔な水を得られるだけの深さがなく、トイレの多くも穴を掘っただけだ。井戸とトイレの距離が十分ではなく、モンスーン(雨期)の降雨で至る所がぬかるんでいる。膨大な数の難民が限られたエリアに極端に密集しているため、衛生状態は非常に悪い。
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