ロヒンギャ難民50万人超「集団感染」の危機 現地入りした医師が見た悲惨な難民キャンプ

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マイナゴナにある診療所(写真:MSF提供)

日本でも、もっと関心を持ってほしい

――今、何が求められているか。

加藤 寛幸(かとう ひろゆき)/島根医科大学卒業。専門は小児救急、熱帯感染症。国内外の病院勤務を経て、2003年にMSFに参加し、現在はMSFの活動に専従。これまでスーダン、インドネシア、パキスタン、南スーダンなどの医療崩壊地域で活動。2015年3月、MSF日本会長に就任(撮影:風間 仁一郎)

現地で痛感したのは、未曾有の緊急事態と膨大なニーズに対して、人道支援活動がまったく追いついていないということ。医療支援活動の経験豊富なメンバーが「今まで世界中でこれほど劣悪な難民キャンプは見たことがない」と驚くほど、ロヒンギャ難民が置かれた状況は深刻であり、私自身が見てきた他地域の難民と比べても絶望の度合いが深い。MSFの活動に限っても医薬品や資機材、医療設備、スタッフが足りず、「もっと多くの患者を救えるのに」と非常にもどかしい思いがした。

日本に帰国して新聞やテレビを見ると、衆議院選挙のニュース一色で、ロヒンギャ問題を伝える報道はほとんどない。しかし、この瞬間にも数万人が死亡するかもしれない緊急事態を無視してよいのだろうか。

西アフリカで発生したエボラ出血熱(2014年)のように、多くの生命が失われないと目を向けないのだろうか。取り返しのつかない大惨事が起きるのを防ぐために、日本でもロヒンギャ難民問題に関心を持っていただき、寄付などを通じた医療活動へのご支援をお願いしたい。

中坪 央暁 ジャーナリスト

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なかつぼ ひろあき / Hiroaki Nakatsubo

毎日新聞ジャカルタ特派員、編集デスクを経て、国際協力分野の専門ジャーナリストとして南スーダン、ウガンダ北部、フィリピン・ミンダナオ島、ミャンマーのロヒンギャ問題など紛争・難民・平和構築の現地取材を続ける。このほか東ティモール独立、インドネシア・アチェ紛争、アフガニスタン紛争などをカバーし、オーストラリアの先住民アボリジニの村で暮らした経験もある。新聞や月刊総合誌、経済専門誌など執筆多数。

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