ミャンマー虐殺、日本政府の対応に広がる失望 日本はアジアの人権侵害にどう向き合うのか

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ミャンマーはこれまで親日国と呼ばれてきた。若者を中心にアニメや日本製品、日本料理の人気は高く、旅行先や就労先としての魅力も感じていたとみられる。ところがクーデターを境に日本に対する失望が広がっていると現地の日系企業関係者は証言する。

国軍がクーデター後に外相に任命したワナマウンルウイン氏を日本政府が「外相」と呼んだことが瞬く間にSNSで広がり、大きな波紋を呼んだ。その後、日本政府は「外相と呼ばれる人」に軌道修正したものの、「日本はどちらの側に立っているのか」と日本人駐在員が詰問されたり、日本語学習や技能実習生への応募を取りやめるケースが相次いでいる。

日本政府にやれることはある

日本の『ミャンマー宥和外交』は機能しているか」で触れたように、ミャンマー国軍とのパイプの目詰まりが明らかになったなら、非道な国軍につくのか、それともミャンマー国民の側に立つのか、日本政府の選択肢は2つに1つしかない。しかも、速やかに旗幟を鮮明にする必要がある。

現在、目詰まりはすでに明らかである。とすれば日本政府は一刻も早くミャンマー国民、中でも危険を冒して抗議する若者らに伝わる明確な意思表示をするべきだ。現況、「日本はミャンマー国民の側に立っている」とは受け止められていないと感じるからだ。

ではどうするか。日本政府は「人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はない」(加藤官房長官)との立場だが、やれることはある。

それは、継続案件も含めたODAの全面停止のほか、日本企業に国軍関連企業との取引停止を要請すること、さらに踏み込めば、国民民主連盟(NLD)の当選議員らでつくる連邦議会代表委員会(CRPH)の正統性を認めることだ。口先だけではない姿勢をミャンマー国民にも国軍にも直接的に示すことが肝心だ。

こうした意思表示は同時に日本国民に対するメッセージにもなる。日本はミャンマーに対する最大の援助国で、2019年度はヤンゴンとマンダレーを結ぶ鉄道やヤンゴンの下水道などの大型インフラ事業を含め1893億円の供与が決まった。累計でいえば、有償、無償、技術協力合わせて2兆円近い支出をしている。

2011年の民政移管後に増加が著しく、5000億円にのぼる過去の延滞債権も放棄した。債権放棄は民主化の進展が前提条件だったはずだが、国軍の暴挙で日本国民の善意が完膚なきまでに蔑ろにされているいま、日本政府は納税者に対しても毅然とした姿勢をみせる必要がある。

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