いじめのピークは「小2」低年齢化の衝撃の実態 10年前は中1だったのがなぜ変化したのか

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仲間外れや無視などの陰湿ないじめは小学校低学年でも確実に起きており、最近の文科省の調査をみると、それが広がっているという傾向が顕著に表れていました。

2019年度に起きた小・中・高のいじめは61万2496件。学年別でみると、もっとも多いのは「小学校2年生」。ちなみに10年前の調査結果を見ると中学1年生がピークでした。多くの人の感覚と近い調査結果だと思いますが、現在はトップ3が小学校1年生から3年生が占めるなど、いじめの低年齢化は顕著なのです。

(出所)文部科学省のデータより筆者作成

専門家の指摘を総合すると、いじめの低年齢化が進んだ要因は2つです。

ひとつは調査の定義が変わったこと。ひやかしや悪ふざけといった軽微な事例も報告するよう文科省が求めており、これに応じて小学校低学年のいじめ件数は増えました。ある小学校教員によれば、そもそも小学校低学年の場合の子たちによる人間関係のトラブルはよく起きていたそうです。

もうひとつの要因は、小学校低学年の子どもたちが感じるストレスが増加したことです。不登校の子どもたちなどを長年にわたり見てきた西野博之さん(フリースペースたまりば)は、ストレスのあまり暴発してしまい、人間関係を築きづらい子も増えてきたと感じているそうです。

背景に早期教育の影響も

西野さんによれば、自分より弱い立場の子どもに暴力を振るうのは、子どもの性格が悪くなったわけではなく、小さいころからストレスをためこむ子が増えたからだと指摘しています。要因は早期教育。幼稚園や保育園のころから、学校に適応するための教育が盛んになり「手遅れにならないように」と習い事を掛け持ちするなど、余裕のない生活をする子が増えているそうです。

それだけが理由ではないと思いますが、「子どもたちの生きづらさはピークに達している」と西野さんは言います。30年以上にわたり、小学校教員を務めてきた先生も「子どもたちの生きづらさ」を指摘していました。チャイムが鳴る前に座らせることや、班ごとに決めたマナーやルールを守らせるなど「子どもたちに求める規範意識が年々、高くなってきていて、子どもがすごく生きづらそう」だと先生は語っていました。

高い規範意識を年少のころから求めた結果、子どもたちは表面上は「よい子」や「問題のない子」に見えるものの仲間内で暴力が横行してしまうのだそうです。

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