こうした経緯からも、日本のこれまでのドラマにはなかった視点が盛り込まれていることに納得させられます。「日本ならではの結婚観や育児環境を取り入れました」と説明する張プロデューサーの言葉からもそれを裏付けることができます。
中国では人間ドラマを表面的に描くドラマはまずヒットしません。オリジナルそのものがリアルな本音を追求した作品であるからこそ、日本版でも結婚、育児の現実を浮き彫りにしながら、手に届きそうな理想を見せる作品になったのではないかと思うのです。
中国版と日本版の違いは?
張プロデューサーが中国と日本の違いを調整したローカライズ対応の内容も教えてくれました。日本版では若い夫婦の話に絞っていますが、オリジナルの中国版では家族全体の問題として描くことに醍醐味を持たせ、両親との意見の相違にも焦点が当てられているそうです。
例えば、中国では娘の結婚相手の条件に重要視するのが“家”と“車”の所有の有無。そのため、中国版は持ち家も車もない相手と結婚することに親が猛烈に反対します。なかでも“育児の方針”については口出しが止まらない描写が続くそう。妊娠期間中から「化粧をするな、化学調味料が含まれる料理は食べるな」と言われ、出産後も育児で過干渉されるたびにけんかシーンが繰り返されます。全12話に収めた日本版に対して、全38話もある中国版ではそんな親のあるある話が盛り込まれているのです。
日本と中国の育児環境の違いもあります。いわゆる「一人っ子政策」が30年以上にわたって続けられた中国では“孫育て”が当たり前。子どもを大事に思うあまりに「6人の大人が1人の子どもを育てる」と言われているそうです。少子化の日本でも両親・両祖父母の合計6人の財布を指した「6ポケット」という言葉がありますが、あくまでも経済面からのもの。
また中国では共働きも一般的なため、子どもが小さいうちは家政婦を雇うケースも珍しくないとはうらやましい話。子どもを両親あるいは家政婦に預けることに何ら抵抗もない中国版に対して、保育園のお迎え時間の制限に四苦八苦しながら、周りに助けてもらう日本版には明らかな違いがあります。この辺りがリメイクする際のアレンジの苦労であり、ほかにはないドラマにつながった理由にあるのです。
「日本版では育休を取る気まずさや、保活(子どもを保育園に入れるため保護者が行う活動)の大変さ、出産後に職場復帰できない現実なども扱い、子育てと仕事の両立を重点的に描いています。作品を通して、新しい家族のかたちとして、ママとして欲張りに生きることの大切さを世の中の女性に提案できればと思います」と、張プロデューサーから作品に対する思いも聞けました。
残念な点と言えば、オリジナルの中国版の初放送は2013年と若干古く、一般的な日本発の作品と比べると、強引な展開も多々あります。それでも、仕事と恋と子育てとオシャレの両立という欲張りなテーマに振り切ったことで、Amazonカスタマーレビューでは星5つ中4の評価を獲得。SNS上の反応も上々と、視聴者から熱い支持を受ける結果を作っています。
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