ノルマ未達組織が売上30%増を達成できた理由 組織を変えるのは天才ではなく「凡人のまね」

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成果を出すポジティブデビアンスとは(写真:Fast&Slow/PIXTA)
前回の記事「成果を出せない『コマドリ』組織の残念な思考」で、なぜトップダウンのゼロベース改革が成功しないのかについて解説した。今回は、組織改革を成功させるために、現場の行動変容から組織を変えるPDアプローチを実践するうえで重要になる「ポジティブな逸脱者」とはどのような人なのか、組織を変えるには何をすべきなのかについて、『POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス)』を翻訳・解説した神戸大学大学院の原田勉教授が解説する。

歯切れのよい幻想が苦悩を増やす

サマセット・モームの『人間の絆』という小説に、次のようなエピソードが紹介されています。

『POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス): 学習する組織に進化する問題解決アプローチ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

東方の王様が人間の歴史を知ろうとして学者に文献を調べさせ、500巻の書物を集めたのですが、政務で忙しくて読む暇がなく、それらを要約するように命じました。

20年後、学者は50巻に要約して持参しましたが、王は、時間はあったけども読む気力がなく、さらに要約するように命じました。

さらにその20年後、学者は杖をつきながら1冊の本にその調査結果をまとめ持参したところ、王様は死の床に伏していました。賢者は人間の歩みを1行にまとめてこう王様の耳元でささやきました。

「人は生まれ、苦しみ、そして死ぬ」

モームがこの小説で伝えたかったことの1つは、幸福や世俗的成功、人生の意味といった幻想を捨て、自ら好む人生模様を自ら織り込んでいけばいいということでした。私たちは幻想をもつからこそ、それがかなわなかったときに苦悩を経験することになるのです。

ゼロベース改革、抜本的変革、構造改革といった歯切れのいい幻想に踊らされ、多額のフィーを支払ってコンサル依頼した企業は少なくないでしょう。

しかし、そのフィーに見合った成果が得られる確率は半分にも満たないのではないでしょうか。少なくとも私が付き合いのある企業では、こうした経験で社内は大混乱に陥り、結局、コンサル以前の状態に戻さざるをえなかったという話をよく聞きます。

このような歯切れのよい幻想は、地道に模様を織り込んでいくことを妨げ、逆に苦悩を増やすことになるのです。

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