44歳で妻に先立たれた男「闘病記」に懸けた人生 1万冊集めたネット古書店がリアル文庫で残る

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人生におけるストレスの度合いを測る有名な指標に、アメリカの社会学者ホームズらが作った社会再適応評価尺度「Social Readjustment Rating Scale(S.R.R.S.)」がある。5000人を超える患者への調査分析に基づいたもので、これによると人生で最もストレス度が大きいのは「配偶者の死」(100点)となる。「自らのけがや病気」(53点)や「退職」(45点)の約2倍のストレスが生じるそうだ。調査の舞台は1967年のアメリカなので時代や国民性で多少の差はあるかもしれないが、星野さんの言葉と矛盾しない。

細かく条件をつけているように、すべての配偶者の関係性に当てはまるものではないものの、星野さんと光子さんの関係性においては誇張のない本心だったように思える。

最後の投稿は2016年1月28日

2013年の初めにパラメディカのトップには「しばらく休業します」と掲げられたが、近況はたまにFacebookに投稿していた。粛々とがん治療を続け、闘病記を探し読む毎日。最後の投稿は2016年1月28日だった。

昨年9月から使ってきた飲み薬の抗がん剤(単独で用いる殺細胞性の抗がん剤)ですが、25、26日と副作用がきつくて、妹ふたりに支えられて病気で点滴を受けてきました。
予想外だったのは、心配していた吐血よりも、食欲減退や吐き気のほうが厳しいことです。
まだ、スチバーガという抗がん剤が残っていますが、こちらはロンサーフよりきついらしい。諦めてはいませんが、潮時というものもあります。吐き気も単純に薬のせいとばかりも言えません。私の体じたい弱っているのでしょう。
(Facebook投稿より)

星野さんが亡くなったのは2016年4月19日。「おそらく2年後には」という予測を大きく越えて、63年と半年の生涯を終えた。

その後もオンライン古書店「パラメディカ」は休業状態のまま公開されていたが、契約していた無料ホームページサービスの終了を機に、「わたしのがんnet」が運営するドメインに移管された。わたしのがんnetはがんとともに生きる当事者と家族が孤立しない社会を目指すNPO法人で、星野さんは2014年9月の発足時から関わっている。

わたしのがんnetにある「星野史雄 パラメディカ」ページ
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