Tシャツのせいで「自殺する農民」がいる現実 インド綿農家の有機農法転換を支援した軌跡

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葛西 龍也(かさいたつや)/1976年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、フェリシモ入社。さまざまなプロジェクト、市場開発、事業開発、事業提携に携わる。2021年同社執行役員退任。同子会社cd.代表取締役、同関係会社LOCCO共同代表取締役。(撮影:梅谷秀司)
インド産オーガニックコットン製品に基金を付けて販売し、集まった基金でインドの貧困綿農家の有機農法転換を支援するPBPコットンプロジェクト。2010年にインド最貧州で本格的に活動を開始、その循環サイクルで農家の生活や土壌の改善に寄与してきた。参加条件は児童労働の禁止。一会社員だった著者を駆り立ててきたのは、次から次へと立ちはだかる「知らなくていいことを知ってしまう」の連鎖だった。『セルフ・デベロップメント・ゴールズ SDGs時代のしあわせコットン物語』を書いた一般財団法人PBP COTTON代表理事の葛西龍也氏に聞いた。

原料を作っている綿農家が自殺している

──始まりは、1双の軍手でした。

当時担当した業務で東京・原宿に進出したのですが、高い家賃が課題でした。買い物中に50円の軍手を見たとき、何か付加価値を付けて売れば家賃代になるとひらめいた。それで調べ始めたんです。軍手は綿糸くずが素材で左右表裏のないデザイン、エコで生産負荷の小さいサステイナブルな品だった。元は戦争道具というネガティブな面とのギャップも面白い。

実はその前に、お客の声を基に反戦メッセージ入りTシャツを基金付きで販売し、アフガニスタンの孤児たちを支援するプロジェクトを始めていました。1人ひとりの100円、200円が積み上がると大きな力になるという実感があった。早速軍手のコラボ商品化に向け走り出しました。

──そして第1の“知らなくていいこと”に遭遇した。

相談に行った先で、「Tシャツ20万枚売って、どれだけの農家が死んだと思う?」の一言を突きつけられた。プロジェクトにはそれなりの手応えを感じていたのに、実は原料を作ってる綿花農家が、僕が作った商品のせいで自殺していると。衝撃でした。

調べてみたら、インドでは遺伝子組み換えの種や農薬・化学肥料代等の借金、健康被害などで綿農家の自殺が30分に1人という説があった。知ってしまったからには何かしなきゃと。そこで、提案されたオーガニックコットンについて調べ、話を聞いて回った。そこから農家の有機栽培への転換を促し、貧困撲滅を目指す活動が始まりました。

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