ちなみに、アメリカの業種別の株価指数を見ると、S&P500指数の業種別騰落率は昨年末の段階では「情報技術」「一般消費財」「コミュニケーション」が20%を超える値上がりを示し、逆に「エネルギー」などが大きなマイナスになっている。
しかし、コロナ後が見えて来た現在、原油価格の上昇によって、エネルギーのセクターは大きく回復している。原油価格の上昇とともに、将来のインフレ期待から長期国債の金利が上昇。相対的に買われすぎていたハイテク株などを中心に、株価は一時的に大きく下げている。
日本の「勝ち組」「負け組」は?
一方、散発的な緊急事態宣言の発令によって、緩いコロナ対策を実施してきた日本はどうだったのか。日本では、パンデミックの影響を受けた業種といえば、真っ先に思い浮かべるのが「飲食業」や「観光」「運輸」といったサービス産業だ。
経済産業省の「サービス産業動向調査」によると、2020年12月の「売上高」は惨憺(さんたん)たるものだったといっていい。この2月26日に公表された速報によるとつぎのようになる(カッコ内は20年12月の前年同期比)。
●生活関連サービス業、娯楽業……70カ月連続のマイナス(-19.5%)
●運輸業・郵便業……15カ月連続のマイナス(-12.3%)
●宿泊業・飲食サービス業……11カ月連続のマイナス(-26.5%)
注意したいのは、サービス業全体がすでにコロナが始まる前から、売上高減少の波にのまれており、そこにコロナが拍車をかけた構図といえる点かもしれない。ちなみに、同じく経済産業省の「商業動態統計」の「業種別商業販売額」の前年比を見ると、不振だった2019年に続いて2020年はさらなる試練の年になったようだ。とりわけ、卸売業ではその影響の大きさがわかる(カッコ内は2019年の対前年同比)。
●卸売業 -12.2%(-3.6%)
●小売業 -3.2%(+0.1%)
要するに、コロナによってモノやサービスが10%程度売れなくなった、と考えていいだろう。財務省の「法人企業統計調査」でも、2020年は売上高が前年同期比でプラスになっているのは、製造業ではほぼない。非製造業でも不動産、情報通信業ぐらいしかプラスになったセクターはない。少なくとも日本企業では大半の企業がコロナの影響をまともに受けたといっていい。
もっとも、株式市場などの金融市場は、日銀による大規模な金融緩和やETF(上場投資信託)買い、そして世界的な株高現象を背景に上昇し続けている。たとえば、業種別の株価動向で見ると、3月19日現在で業種別指数ランキングではトップの海運をはじめとして、通信、陸運、電気機器、その他製造、非鉄・金属などがいずれも80~100%近い対前年比を示している。株価が2倍近くになった業種が多かったわけだ。また業種中最も低い電力でもプラス圏にあり、株価だけでは勝ち組、負け組ははっきりしない。
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