だが、嬉しい出会いもあった。
「公務員になって2年目に、後輩職員が入ってきたんですが、僕は彼女のことを熱烈に好きになってしまいました。後輩だったけど年齢は一緒だったし、食品営業の前職があるなど共通点もたくさんありました」
古川さんは付き合ってほしいという告白を飛び越えて、いきなり
「結婚してくれ!!」
とプロポーズした。もちろん断られてしまった。
「でもその後、何度も『結婚してくれ!!』と言い続けていたら、結婚してくれました。29歳のときでした」
結婚したころ、古川さんの仕事は生活保護のケースワーカーから、税務課に移っていた。
「税務課の仕事が僕には本当に合いませんでした。ザ・お役所仕事という感じの、現場感のなさがつらかったです。
そして企業でもダメ、公務員でもダメ、という自分のこらえしょうのなさにも凹みました」
古川さんは奥さんに、
「本当に仕事がつらくてさ……」
と愚痴った。すると
「やめちゃいなよ」
とアドバイスしてくれた。
「結婚して数カ月でやめられないよ。あなたのご両親だって怒るでしょ?」
というと、彼女は
「そんなの黙っておけばいいんだよ。もし本当に食べられなくなったら、生活保護を受ければいいよ」
と明るく言った。
「生活保護を受けている人たちが、どのようなつらい状況の中で生きているか、2人とも痛いほどよく知っていました。知ったうえで、そう言ってくれる彼女は、なんてすごい人なんだろうと思いました。
もちろん、彼女は本当に生活保護を頼りにしようとはしていないのですが、踏ん切りのつかない僕にわかりやすいようにそう言ってくれたんだと思います」
2013年末で会社員を辞めフリーランスに
古川さんはその会話をした翌日、辞表を出した。
2013年12月31日に公務員を辞め、2014年からはフリーランスになった。
「一生続けられる本当にやりたい仕事は何か? と考え、クイズ作家になることにしました。そして2014年9月に『クイズ法人 カプリティオ』を立ち上げました」
『クイズ法人 カプリティオ』は総合的なクイズ・パズル制作集団だ。
「僕はクイズプレーヤー時代10人の弟子をとりました。ちなみに10人中4人が日本一になっています。10番目の弟子である、松崎利浩が一緒に仕事をしたいと声をかけてきました」
2人で仕事をはじめ軌道に乗ったころに、高校時代の後輩だった酒井英太さんが薬剤師を辞めてメンバーに加わった。
そして翌年になって、東日本のエース石野将樹さんが仲間に加わった。
現在も『クイズ法人 カプリティオ』は、基本的にこの4人で運営している。
「まるで少年漫画でライバルや敵だったキャラが集結する胸アツな展開でした」
ただ仕事は最初からうまくいったわけではなかった。
クイズ作家という職業は定着していなかった。テレビ番組の場合、放送作家が兼務している場合が多かった。放送作家のつてで大学のクイズ研究会の人たちが問題を作ったりする場合もあった。
「クイズ作家としての仕事はすぐにいただけました。作家が抜けたから手伝ってくれと言われました。製作チームに入れてもらう感じですね。そのときお声がけくださった方々には今でも本当に感謝しています。ただ、クイズを出題する相手がクイズオタクから一般人に変わったので、最初は言い回しや難易度に戸惑いました。
仕事には恵まれましたが、お金が振り込まれるのに時差があって、最初の半年はほぼ無収入でした。2014年の下半期から、なんとか暮らしていける程度の収入はもらえるようになりました」
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