海外留学できぬ学生救う「国内留学」の濃い中身 オンラインとリアルを組み合わせた英語体験

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リアルとオンラインを組み合わせた国内研修が誕生したのは、海外の環境を経験する重要性を大学側が知っているからでした。

「海外に渡航して自分がマイノリティーになったときや、慣れない環境で物事を解決していくことを乗り越えて、自信を持って日本に帰ってくる。コロナ禍の中でもそういった環境を作ることができないかと悩みました」(佐野氏)

オンライン研修の場合だと、いったんZoomを切ってしまうと元に戻ってしまうため、本当の意味での没入感を作るのは難しい。そういったときにブリティッシュヒルズを使うことにたどり着いたそうです。「デジタルの時代だからこそ、リアルの価値があるのではないか」と佐野氏は言います。

国内での「武者修行」インターンシップ

以前掲載の記事『ベトナム武者修行する日本学生が増える理由』では、ベトナムのホイアンで武者修行インターンシップに奮闘する日本人学生の様子をお伝えしました。留学だけでなく、海外インターンシップも派遣中止の状況が続いている中、国内での地方創生をテーマにした実践型の研修として進化を遂げています。

以下は、どちらも大学生がこの春休みに2週間で取り組んだ国内研修のテーマの例です。

  • ・日本有数の生マグロの水揚げで知られる、和歌山県那智勝浦町でテイクアウトメニューの開発
  • ・沖縄県那覇市のカフェで「うちなーんちゅ」の憩いの場づくり
  •  

研修はコロナ対策も万全に行っての参加となります。沖縄現地で研修を取材した筆者も含め全員がPCR検査を受け、厚生省の「新しい生活様式」に従うこと、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」を入れること、マスク着用などが徹底され、地元の方や周囲への配慮が見受けられました。

(写真:旅武者)

参加者は沖縄県那覇市にあるカフェで、新商品開発やプロモーション施策の企画立案にチームで挑戦します。

4つあるチームの1つでは、琉球王府時代から受け継がれている伝統工芸「琉球和紙」に着目。コロナ禍で交流が減少して寂しいという街の声をもとに間接的な交流機会を提供したいと、琉球和紙を使ったワークショップを企画しました。

実際2週間の合宿研修はかなりハードです。朝礼に始まり、日中は街頭でニーズの聞き取りアンケートを実施したり、リサーチとデータの検証を繰り返したりしながら最終的な企画の立ち上げへと走っていきます。

終礼では、日々直面している課題やチームワークでの悩みについて、学生同士は敬語禁止のルールの中、腹を割って話し合います。終盤になると体力と精神力の限界を感じながら、効果測定や最終のプレゼンテーションに向けて、深夜遅くまで準備にかかりっきりで頑張っていました。

この間、ビジネスとチームビルディングの2人のファシリテーターが伴走しながらサポートするのですが、「学生が自分で気づいて行動する」点を重視しているため、必要なビジネスのインプットを与えつつも「こうしなさい」とは決して言いません。

武者修行プログラムは、経験学習サイクルを何度も回転させ、グローバル人材として必要な「自走式エンジン」を搭載させるとしていますが、そのため経験豊かなファシリテーターの忍耐強い支援が肝であると感じました。

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