ユニクロのジーンズも担う「黒子」が挑む表舞台 あの「カイハラデニム」が一般消費者向けに販売
長年、あらゆるアパレルブランドの“黒子”に徹してきた名門企業がコロナ禍の今、一般消費者向けのジーンズ販売という表舞台に出てきた。広島県福山市にあるデニム生地メーカーで国内首位のカイハラだ。
同社は、ユニクロやエドウイン、リーバイスなど、国内外の名だたるブランドの生地製造を手がけており、国内シェアは約50%を誇る。国内製のジーンズの半数が同社製造のデニム生地を使用している計算だ。紡績・染色・織布・加工を自社で一貫して行う体制を強みに、世界約30カ国に生地を供給する。
初めて一般消費者向けに売り出したのは、自社開発した新たなデニム生地「MONSTER STRETCH(モンスターストレッチ)」を使用したストレッチジーンズだ。消費者に「応援購入」してもらうことで新製品などの開発資金を賄うクラウドファンディングサイト「マクアケ」で、2月10日から予約販売を開始した。
価格は一本約2万円。ユニクロや大手量販店のジーンズと比べると高価だが、3月22日時点で約600人の応援を得て、目標額(50万円)の26倍に当たる1300万円超が購入された。
10年に及んだ開発をコロナが直撃
ストレッチジーンズは生地の横糸に伸縮性素材を使う。そのため綿100%素材のジーンズに比べ、洗うと生地が伸びたり縫製にばらつきが出やすい。モンスターストレッチは使用する糸や織り方を変え、綿100%のデニムと同等の回復率(伸びた生地がどのくらいで元の形状に戻るかを評価した指標)や見た目を実現したという。しかも定番のストレッチデニム以上の伸び率を持つ。
モンスターストレッチは「従来のストレッチデニムの難点を解消した、世の中にないものを作ろう」という掛け声のもと、10年前から開発を進めてきた。生地として品質を確立させ、本格的に取引先のアパレルへ提案しようとしたのが2020年春。その矢先に、新型コロナウイルスが国内外を襲った。
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