ユニクロのジーンズも担う「黒子」が挑む表舞台 あの「カイハラデニム」が一般消費者向けに販売
対面での提案活動が制約されたうえ、外出自粛の影響でアパレル各社の売り上げも急減。在宅で過ごす人が増え、「履き心地の楽なイージーパンツやスウェットの需要は根強い半面、ジーンズの売れ行きは非常に厳しい」(ある大手ジーンズ量販店の幹部)状況になった。カイハラの取引先も多くがジーンズの製品在庫を抱え、新規受注を取りづらくなった。
高い機能性を追求したモンスターストレッチは原糸や製造工程にこだわり、生産量はまだ小規模だ。通常のデニム生地と比べ単価も高く、コロナ禍の厳しい経営環境で積極的に採用しようとするアパレルは少なかった。
「コロナの感染拡大が収束してもアパレルの受注が以前の水準に回復するかは見通せない。一方で開発品が埋もれてしまうと、社員のモチベーションが下がる。この停滞をどう脱却するか考えた結果、クラウドファンディングを通じて自社のジーンズとして販売することを決めた」。カイハラの稲垣博章執行役員はそう語る。
購入者の声を直接聞いて開発に活かす
法人向けビジネス一筋だったカイハラにとって、一般消費者向け販売への参入は大きな決断だった。この挑戦を決めたのは、社員のモチベーションの問題だけでなく、自社製品を通して会社の知名度拡大や、消費者の意見を取り入れた素材開発につなげたいという思いもあった。
ジーンズメーカーで作る業界団体の「日本ジーンズ協議会」によると、国内でのジーンズ生産量は2000年前後をピークに減少傾向が続く。アメカジブームが低迷し、ジーンズを着回した流行も生まれていないため、ファッションへの支出が多い10~30代の着用率の低下が著しい。
カイハラは多くの海外ブランドと取引があるものの、販売先の約7割は国内事業者だ。国内市場でのジーンズ需要の減少に危機意識が高まり、2~3年前から「カイハラデニム」のブランディングを本格化。SNSでの発信やブランドとのコラボ企画に積極的に取り組み、一般消費者の知名度向上や各国アパレルブランドから指名買いをされるための基盤作りに注力している。
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