駒大・大八木監督「私の本気を選手に伝えている」

平成の常勝軍団を復活させた名将が語る指導論

――選手へのフォローを垣間見たシーンが箱根でありました。10区で逆転しそうなタイミングで、監督が叱咤激励するのかと思いきや、後部座席に陣取っていた主務の青山尚大さんにマイクを渡しましたよね。

はい、本当に一生懸命にやってくれている4年生で。監督の右腕となってずっとやってきた子なのでね。マネジャーっていちばん大変なんです。だから最後にこの箱根で、「優勝するかもしれないぞ。お前、4年で最後だから、こういうところで一言檄飛ばせ」みたいな思いでした。「青山には世話になったな」と思ったから。そういう感性があって、気配り、目配りする。それが大事だと思っています。感性を持っていないリーダーは、そのチームを強くさせられない。「鈍感は罪だ」って子どもたちにも、よく言っています。

――全日本大学駅伝と箱根駅伝では起用する選手を変更しました。全日本で優勝した選手は、箱根も走りたかったんじゃないでしょうか。

走りたかったと思います。でも箱根までの練習の内容とか、仕上がりとか、取り組む姿勢とか。その差で選びました。選ぶのはつらかった。だけど情を出したら失敗する。ケガが完治してないのに4年生だからと情を出して失敗したこともあります。そうなると、かえってかわいそうなところもあるんですよね。だから、今回は本当に情を出さずに選びました。ちょっと私にもきつかったです。

寮内に貼られた2020年のスローガン(撮影:尾形 文繁)

「やっぱり好きだから」

――難しい選択ですよね。選ばれなかった子たちにかける言葉も難しいのでは。

だから結果が大事なんです。自分が目指しているのはつねに最低3番以内。だから選手を選ぶにしても最低3番に入れるかどうかで決める。そういう選手選考をして3番以内に入ったときには、子どもたちはたぶん何も言わないですね。指導者は、そこを読めるか読めないか。読める人が、やっぱり指導者として続けていけるんでしょう。

――これだけ長く指導の第一線で活躍されている秘訣は何ですか。

やっぱり好きだからですよ。陸上が好きだからだと思いますね。もう今年で辞めるかな、もう定年だ、60歳も過ぎた、もう辞めようかな、と思ったときもありましたけども(笑)。だけど、またシーズンが来るとやっぱりワクワクしてくるんですよね。なんか教えたくなるというか。またそういう選手に出会ったらワクワクが出るじゃないですか。田澤とか、(中村)匠吾とか。やっぱり楽しさがあるんですよ。匠吾がMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を走るときも、絶対勝たせたい、絶対にオリンピックに行くぞって。それで、匠吾と2人でガーッと頑張ってね。その楽しさというか、面白さというか。

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