親の「夜ふかし」が子供の健康に与える大問題 家族全員での「生活リズム」の見直しが必要だ

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不機嫌だったり泣いたりすることが多く、発達指数が境界領域かやや低い場合は、脳機能の発達が抑制されている恐れがあります。その時点で発達に目立った問題がなくても、安心せず新生児のときの様子や詳しい発達の状況を把握しておく必要があります。

なぜなら体内時計にずれや混乱が生じてあらわれた睡眠障害は、すぐに心身の症状がでなくてもあとになって少しずつ問題が起きることが多いからです。繰り返しますが、睡眠持続障害は発達障害の子どもがもつ睡眠障害の特徴の1つです(Krakowiak P, 2008)。専門医の治療を必要とします。

ADHDと睡眠の関係

「寝つき不眠」「入眠不眠(Sleep onset insomnia)」という言葉の使用は、小児科領域では2000年代から始まりました(Smits MG, 2001)。医学的には乳幼児を含む子どもたちを対象に「入眠困難」「入眠障害」または「睡眠相後退症候群」という表現が用いられています。

「不眠」とは必要に応じて入眠や睡眠の持続が困難な状態です。この入眠困難は、なかなか入眠できませんが、一度入眠すると睡眠は持続します。

治療に際してメラトニンを用いると症状が改善するので(Smits MG, 2001 およびvan Geijlswijk IM, 2011)、背景にはやはり生活リズムのずれに伴う体内時計のずれがあると考えます(Bijlenga D, 2019)。一番の心配は、この状態が将来のADHDなどと関連する可能性が高く、ADHDを含むASD児に共通して認められることです。

ここで少しADHDについて補足します。乳幼児期の睡眠の問題とADHDの関連を述べた論文数は、この3年間でゆうに450以上に及びます。それほどまでにADHDの睡眠に関心が集まってきています。

各報告を整理すると、ADHDに共通する睡眠は、①入眠時間のずれ(入眠困難・寝つき不眠)、②頻回の中途覚醒、または長時間の覚醒、③1日8時間以下の短い睡眠、④よく泣く子(持続的な泣き)です。報告では、①から③の睡眠障害のある乳幼児の20〜25%がのちにADHDと診断されています(Thumstöme M, 2002 および Wolke D, 2002)。

このように、ADHDの子どもには高頻度で概日リズムに異常があり、関連性が強く指摘されています(Coogan AN, 2016, 2017)。またこれらの睡眠問題に加えて、睡眠中の多動を指摘する報告があります(Cortese S, 2006)。

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