大手ゼネコン鹿島「69歳社長」就任の意外な背景

後任社長の「本命候補」は創業家出身者だった

押味氏が強調するように、天野氏が実績や経験が豊富な経営者であることは間違いないだろう。ただ、業界関係者が驚いたのはその年齢だ。「いくらなんでも69歳は高齢すぎる」「69歳の新社長って、いったい何なのでしょうか」といった声があがる。押味氏が社長に就任した際も66歳と高齢だったが、天野氏はそれを上回る年齢での就任となる。

天野氏就任の背景を読み解くカギは、会見の回答の中にある。押味氏の話しぶりをよく精査すると、後任を託したかった「本命」は別の人物だったニュアンスがにじみ出ている。

経営陣に名を連ねる創業家

押味氏は会見中、「創業家の存在を非常に重く見ている」と何度も繰り返した。「私にとっては、重い創業家なのです。創業家は仕事にこだわりを持っていた。物事を合理的に考え、社会貢献する。われわれはこのDNAを継承してきているし、次の世代に伝えなければならない」(押味氏)。

ほかのスーパーゼネコン同様、創業181年の歴史を持つ鹿島の経営に、創業家が大きな力を持っていることは確かだ。

「中興の祖」と言われた鹿島守之助氏(4代目社長)の息子、昭一氏(8代目社長、2020年11月死去)は直近まで事実上のオーナーだった。現経営陣には、「3人娘」と言われる守之助氏の娘(昭一氏の姉)たちの息子である渥美直紀代表取締役副社長(71)、石川洋取締役副社長(62)、平泉信之取締役(62)が名を連ねている。

押味氏はなぜ、この創業家一族から次の社長を選ばなかったのか。「昭一氏が亡くなる前に、後継についての相談をしなかったのか」。記者から問われた押味氏は次のように答えた。

「(昭一氏とは生前に)年に2回、じっくりとお話しする機会を設けてもらっていた。『中核である建設業をしっかりとやらなければいけない』という話をずっと受けていた。後継者についても、お願いを申し上げたこともあった。ただ、その面は譲らなかった。強い意志を示された」

この言葉の意味を、鹿島の経営体制に詳しい業界関係者はこう読み解く。「押味氏は創業家への『大政奉還』を描いていた。現在の経営陣のうち、平泉氏は2012年に取締役就任と遅かったこともあり、今回の社長候補ではなかったかもしれない。渥美氏は(71歳と)高齢で2021年6月の取締役退任が決まっており、本命は石川氏だったのではないか」

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