営業で「御社の課題は?」と聞く人が残念なワケ 伝説の営業に学ぶ「顧客が求めるもの」3類型

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しかし、このケースからわかるのは、それが多くの人の生活を変えるイノベーションになるためのすべての条件ではない、ということです。iPhoneやT型フォードにあり、セグウェイになかったもの、それはいったい何だったのでしょうか。

答えはシンプルです。顧客が求めるものに答えていたか、です。iPhoneやT型フォードがもたらした価値は、単に「顧客の期待の先を行っていた」だけではありません。

それは結果としてそう見えた、というだけで、その実、顧客が自覚したり言語化できていなかったりした、心の奥に潜む欲求にしっかりと答えていたのです。つまり、顧客がそう自覚してはいなかったものの、そこには確かに「顧客が求めるもの」があったのです。

「顧客が求めるもの」は3種類ある

「顧客が求めるもの」は、大きく3つの種類に分類できます。①顧客が自覚しており、それを公言できるもの②顧客は自覚しているものの、それを公言したくはないもの。そして、③顧客自身が自覚していないものです。

例えば、「ボルヴィック」と「山の天然水」という無名の(架空の)ミネラルウォーターを比較して、最終的に5円高いボルビックを選ぶ消費者は、この商品に何を求めているのでしょうか。

「喉の渇きを癒やしてくれる」ことを求めているのは、顧客自身自覚しているでしょうし、それを公言しない理由もないでしょう。しかし、これだけなら、5円安い「山の天然水」を選ぶほうが合理的です。

それでは、そこで購入したミネラルウォーターを、同じビルにあるジムに持ち込んで運動中に飲む、というシチュエーションだったらどうでしょう。そのジムには気になる異性がいて、いつも視線を意識していたとします。

見たこともない「山の天然水」を目撃され、わざわざ安売り品を持ち込んでいるんだ、と思われるのは何となく心外です。その点、洗練されたイメージのボルヴィックは、逆に自分を飾り立てる「アクセサリー」のような働きをしてくれます。その価値を考えると、5円の差は安いものでしょう。

このとき、ボルヴィックを選んだ理由を聞かれて、「気になる異性の前でいい格好をしたいから」と答える人はまずいないでしょう。これはまさに、「自覚しているものの、それを公言したくはない」商品の価値です。

ボルヴィックはフランス産のミネラルウォーターで、パッケージにはfrom Franceの文字とトリコロールのフランス国旗があしらわれています。フランスの価値観が好きで、それに共感する気持ちが購入を後押ししている、という場合、顧客がそれを自覚したり言語化できていることは稀でしょう。

実はこうした「言葉にならない」顧客の欲求こそ、デキる営業パーソンが雑談の中で探ろうとしていることなのです。

たとえば、あるコピー機を導入することで、購買担当者が求めているのは、経費の削減だけではないかもしれません。社内での自分の評価や、製品・会社への共感が購買の後押しをしているという場合、それを正攻法の商談でダイレクトに聞き出すことは困難です。

だからこそ、それは雑談を通じて「引き出さなくては」なりません。そのためには、その人個人の価値観や人となりを聞き出す必要があるかもしれません。

次ページ雑談で得た「仮説」を具体的な提案で検証する
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