片道24時間「小笠原でワーケーション」は可能か アフターコロナの新しい働き方のヒントに

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小笠原産の特産物の生産も始まっています。そもそも新しいモノ、見知らぬモノを拒むことなく受け入れ、イノベーティブな挑戦をするのは、独自のミックスカルチャーを生み出してきた小笠原の人たちの気質とか。

小笠原でマンゴーの栽培にも初めて成功した「挑戦する農家」こと折田一夫さんは、無謀といわれた難題にたったひとりで挑み、10年以上かけて母島で初のカカオの栽培に成功しました。その東京産カカオを100%使ってつくる「東京カカオ」は、ビーントゥーバーならぬ「ツリートゥーバー」チョコレートとして、いまや世界から注目されています。

東京産のツリートゥーバーチョコレート「東京カカオ」(写真:江藤詩文)
母島産カカオ。カカオの実は熟すと甘い香りを放ち、食べるとライチのように甘酸っぱくフレッシュな味わい(写真:江藤詩文)
母島の「折田農園」で大切に育てられているカカオ(写真:江藤詩文)

朝日と共に目覚め、夜は静寂と暗闇の中で眠る

いわば彼らは、コロナ禍のずっと前から僻地で起業したリモートワークの達人たち。場所に縛られずに働くとはどういうことか。それを体現しているモデルケースにたくさん出会えるのです。これは何とも刺激的な体験ではないでしょうか。

そんな小笠原の人たちのライフスタイルは、内地とは大きく違います。島暮らしは天候に左右されやすいこともあり、スケジュールを詰め込まず、約束はゆるめ。多くの人が仲間たちといくつかの事業を立ち上げたり、副業を持ったりしながら、朝や夕方には海辺を散歩したり、サーフィンを楽しんだり、自然と共生しています。

島に到着した当初、効率ばかりを重視して1日にアポをいくつも詰め込み、つねに時間を気にして、ものごとが予定どおりに進まないとイライラしてばかりいた筆者は、島の人たちに何度「流れに身を任せれば、最終的にはすべてうまくいく」と諭されたことか。朝日と共に目覚め、夜は静寂と暗闇の中でぐっすりと眠る。リモートワーク時代の働き方を、改めて考えさせられました。

小笠原は遠くてなかなか足が向かないけれど、一度行くとハマってリピーターになる人が多いそうで、今ではそれもわかる気がしています。

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