日本の代議制民主主義はアップデートが必要か 待鳥聡史さんが語る「政治家に求められる役割」

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須賀:そのような状況下において、代議制民主主義というシステム自体も変わっていくべきだとお考えになりますか? バルセロナなどで利用される「Decidim(ディシディム)」は、パブリックコメントを合理的に吸い上げ、市民の意見を構造的に可視化する、デジタル時代における合意形成のプラットフォームですが、デジタルテクノロジーの発達によって、技術的、形式的には直接民主主義の仕組みを行うことも可能になっています。

待鳥:前提として、技術的にできることと、それを採用すべきかどうかということはまったく異なる論点だと確認しておくべきでしょう。つまり、直接民主主義は今日技術的には可能になっていると思いますが、実際に価値があるかどうかは別に考えていく必要があります。

代議制(間接民主主義)については、直接民主主義が実現できないので代わりに採用していると説明されたり、古代ギリシャでは市民全員が集まって議論をしたりしたが、政治的な意思決定を必要とする領域や人口が大きくなれば不可能になるので代議制を採用したのが起源であるという説明がなされますが、歴史的事実には反しています。

代議制は、直接民主主義とはまったく異なるルーツや意義を持っており、仮に、市民の意向を忠実に測ることができたとしても、それを徹底して尊重することに最大価値を置いていないメカニズムなんです。そして、そのようなメカニズムこそが、技術的に直接民主主義が可能になったとしても代議制を続ける意味だと考えています。

須賀:なるほど。

待鳥 聡史(まちどり・さとし)/京都大学法学部教授。1971年生まれ。1993年京都大学法学部卒業。1996年京都大学大学院法学研究科博士後期課程退学。博士(法学)。大阪大学助教授などを経て、2007年より現職。専攻は比較政治論。主な著書として『首相政治の制度分析』(千倉書房、サントリー学芸賞受賞)、『代議制民主主義』(中公新書)、『政治改革再考』(新潮選書)など(撮影:倉科直弘 Naohiro Kurashina)

民主主義はどんな考え方や立場をとっていい

待鳥:直接民主主義に対しては、人が何に関心を持つかということはそれぞれ異なるし、どれだけ物事を論理的に考えているか、知っているかも人によって違うからこそ、すべての意見が平等に直接反映されてしまうのはダメなんだという意見もありますが、それは直接民主主義の弱点を指摘しているにしても、民主主義批判としてはあまり核心を突いているとは思えません。この考え方を裏返せば、いい意見だから取り入れよう、ちゃんとした意見だから取り入れよう、それは思いつきの意見だから聞かないようにしよう、そうすれば民主主義はよくなるという発想になります。

しかし、そのような立場は民主主義によっては正当化できません。純粋な意味での民主主義は、原則的にはどのような考え方や立場をとっていいんです。早く議論を終わらせたいからという理由で極論を言うことも自由です。

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