日本の「境界ない」建築が世界に求められる理由

妹島和世さんが語る「建築・デザイン」のこれから

建築家の妹島和世さんに聞きました(撮影:間部 百合)
グローバルの舞台で、かつてあったはずの輝きとプレゼンスが日本から失われているのはなぜなのか。そして、そこから脱却するためには何が必要なのか。
政府、企業、市民社会、専門家との連携を通じ、テクノロジーを最大限に活用して社会課題を解決するための必要なルールづくりと実証を推進する「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」。その初代センター長を務める須賀千鶴が、日本を代表する各界の知識人に真正面から問いかけて議論していく対談シリーズ第2回。

システムの見直しを迫られている

対談シリーズで、どうしてもお話をお聞きしたかった方がいる。多様な領域を跨ぎながら世界の第一線で活躍する建築家・妹島和世さんだ。シビックテックやオープンイノベーションなど、システムやサービスの開発に、利用者やさまざまなステークホルダーを巻き込む手法がグローバルに広がる以前から、妹島さんは建築を通じて、使い手となる市民を主体性のある「作り手」として編み直すことを1つのテーマとして掲げてきた。妹島さんが語る、温もりあるビジョンや思想は、混迷を深め、物おじしたくなるような社会状況を見通す希望や前向きさを授けてくれた。

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須賀 千鶴(以下、須賀):コロナウイルスのパンデミックを経て、社会ではさまざまな激変が起こっています。まずは、妹島さんが感じていらっしゃる社会における大きな変化、困難についてお聞かせください。

妹島 和世(以下、妹島):まずは、これほど世界中の人が同時に移動しないことになったのはここ数十年の流れを振り返っても非常に大きなことだと感じています。2011年の東日本大震災の際に、私たちの生き方と自然界のバランスが崩れかけていることや、自然がいかに自分たちの手に負えるものでないかということを実感しましたが、その後の世界でも、水害や山火事など、自然界のバランスが崩れ始めているような現象が世界各地で起こっています。

人間社会の行きすぎたシステムが限界を迎えているように感じますし、システム自体をもう一度見直さなくてはならない時期にきているのだと思います。

生活や働き方もここ数十年で大きく変わりました。私が若い頃は、家族関係が強固で、決まった家族関係に基づいた生活の仕方がありましたが、今では、さまざまな家族や結婚のあり方が現れ、いろいろな働き方が認められつつあります。社会のシステムや働き方、時間の送り方といったことが少しずつ変わっていく流れにあると感じています。

須賀:人の移動の制限といった変化は、妹島さんが一貫してお持ちである、人々の「交流」や「関係性」といったテーマにも影響がありましたか?

妹島:影響は少なからずあるかと思いますが、一方で、人同士の交流はこれからもなくならないと考えています。都市の面白さはいろいろな人が一緒にいるということだと思います。それぞれの違いを尊重しながら、一緒にいられるあり方を探したいですね。デジタル上でもさまざまなコミュニケーションが成立するようになっていますが、実際の空間の中で、いろいろな人が一緒にいて、さまざまな集まり方があるようなダイナミックさをデザインしたいと日々考えています。

須賀:とても重要なことですね。

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