日本人は過去150年の経験を生かし切れてない 苅谷剛彦さんが語る「知に対する謙虚さ」の意味

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オックスフォード大学の苅谷剛彦教授(写真はZoomより)
グローバルの舞台で、かつてあったはずの輝きとプレゼンスが日本から失われているのはなぜなのか。そして、そこから脱却するためには何が必要なのか。
政府、企業、市民社会、専門家との連携を通じ、テクノロジーを最大限に活用して社会課題を解決するための必要なルールづくりと実証を推進する「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」。その初代センター長を務める須賀千鶴氏が、日本を代表する各界の知識人に真正面から問いかけて議論していく対談シリーズ第3回。
これまでの社会の前提が大きく変わりつつある中、日本の教育のあり方も、「グローバル」との対比のもと、多くの議論が交わされてきた。一方で、私たち日本人は、教育の「グローバル化」や「未来」を追いかける過程で、本来、学ぶべき「過去」について振り返ることをやめてしまったのではないだろうか。日本人が立ち返るべき「内部の参照点」や、不確実で不安定な時代だからこそ求められる「知に対する謙虚さ」とは何を指すのか。日本を代表する知性である、オックスフォード大学の苅谷剛彦教授に話を聞いた。

「スペイン風邪」の大流行とは異なること

須賀 千鶴(以下、須賀):現在のコロナウイルスのパンデミックについて、苅谷さんが感じていらっしゃることを教えてください。

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苅谷 剛彦(以下、苅谷):今回のパンデミックの前にも、人類は100年前にいわゆる「スペイン風邪」の大流行を経験しています。ですが、今回と100年前のパンデミックが大きく異なるのは、情報のネットワークの発達度合いです。

100年前は、マスメディアやインターネットを含めて、情報のネットワークがそれほど発達していなかったので、各国が感染症に対してどのような対応を取っているのかを、世界中の人がつぶさに知ることができるような状況では決してありませんでした。

現在のように、感染者数や重症者数、亡くなった人の数など、世界中の状況を手に取るように把握でき、自分たちの国の状況とほかの国の状況を見比べて、グローバルに起きている影響を明確に知ることができるのは、人類の経験の中でも初めてのことだと思います。

さらに、今回のパンデミックは、個人の健康に関するリスクだけでなく、社会や経済など、さまざまな側面に影響が及んでいるので、多様な局面や層に関する知識や情報が瞬く間に共有されます。あらゆる情報がさまざまなレイヤーに影響し、それらが複雑に絡み合いながら、情報として爆発しており、個別の情報が入ってきたとしても、それを判断することが非常に難しい状況にあります。

感染症対策は科学的にもまだ正解が出ていない状況にありますし、ウイルスを原因に生じている経済的、社会的な出来事への関連も完全に解明することは不可能です。人々の不安が大きく高まっている中で、フェイクニュースのようなものが、あたかも真実のように広がってしまうことも、ある意味ではやむをえないことなのかもしれません。

情報の生産と消費がこれだけ自分たちの生活に関わる形で爆発的に起きている中で、人類が積み上げてきた知性がこれほどまでに試されている状況というのはいまだかつてなかったと思います。

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