待鳥:そうですね。戦後はずっと総括をやってきませんでした。総括をすると、過去の判断を否定する場面が出てくるので、昔、その計画や実施に関わった人が嫌な顔をします。出世して上のポストにいる人でも、過去のことを振り返られることをとてもネガティブに捉えますが、それは不名誉なことでもなんでもないんです。そういった雰囲気を変えていく必要があります。
須賀:グローバルに知的貢献をするという意識が、日本は官民とも薄いですよね。自分たちがやっていることは、たいしたことがないと過度に謙遜したり、グローバルで共有不可能な「日本型」などの特殊論を持ち出したりするような態度が、国際舞台における日本の存在感の低下の原因だと感じます。
検証は後世のためになる
待鳥:検証作業は国際公共財のベースになりますが、失敗は成功の母という古い言い回しを持ち出すまでもなく、何より後世のためになるものです。ただ、今すぐにリターンが返ってこないことに対して、ちょっと費用や時間を惜しんでしまう。
戦後の日本が短期間で復興から経済成長を成し遂げていく中で、古いものを壊し、前へ前へと進んできたために、組織の構造や予算の組み方などにもその発想が強く残っており、検証作業をする妨げになっているのだと思います。それを検証しない文化があるのだと諦めてしまうのではなく、人やお金をきちんとつけることで変えていけることだと認識しておくべきです。
現在の日本は、これまで行われてきた行政改革によって、トップに意志があればダイナミックにさまざまなことが行えるような体制になっていますから、将来への利益になることに対しても積極的に取り組む姿勢を見せてほしいと思っています。
須賀:総括はグローバルでの知的貢献になるだけでなく、苅谷剛彦・オックスフォード大学教授(本連載シリーズ第3回「日本人は過去150年の経験を生かし切れてない」2021年2月5日配信)がおっしゃっていたように、国内の議論の出発点となる、内部の参照点にもなりますよね。
待鳥:日本にしかない経験というのは非常に多くあります。例えば、少子高齢化についても、なぜこのようなことが起きたのかということをきちんと検証し、明瞭に説明することができれば、世界に対してきちんと説明すれば役に立つのですが、説明するための前提作業ができていないのが現状です。それができないと、それをベースに発信していくという次の作業を行うことができません。
須賀:発想を変えることができれば、日本はもっとグローバルで存在感を発揮できるはずですよね。本日はありがとうございました。
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