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日本の代議制民主主義はアップデートが必要か 待鳥聡史さんが語る「政治家に求められる役割」

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  • 須賀 千鶴 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長
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待鳥:ですから、問題に対する選択の基礎条件や制約があるのだとすれば、それを語っていく際には、絶対に取れない選択肢があることを明示することも政治家の重要な役割です。これからの時代はとくにそうでしょう。絶対に取れない選択肢が自明であり、そのことが容易に導き出せる時代であれば、選択は簡単になります。例えば、明治時代の日本は、このままでは欧米列強の植民地になってしまう、国が滅んでしまうという危機が迫っていたので、ある程度まで選択肢が自明のものとしてありました。

そのような時代が終わり、何が自明な選択肢なのかということがわからなくなってしまえば、判断は難しくなります。日本で一般に「追いつき型近代化の終焉」とされるのはこうした変化を意味しますが、それは冷戦終結後のグローバル化によりいっそう強まったことは間違いありません。このような時代の政治家には、明らかに取ることができない選択肢があるんだということも含めて、目の前にある課題が複雑な連鎖の中にあることを解きほぐしつつ丁寧に説明する作業が求められます。

人々に正解を与えるのではない

待鳥:ややはやりの言い方をするなら、何と何がどう結びつき、どれだけの選択肢があるのかを説明をしていく作業が、最終的にはある種の「ナッジ」のような機能を果たすということでしょう。今政治にできる最大のことは、ナッジを作ることではないかと思っています。人々に対して正解を与えるのではなく、人々が自由であることを前提に、どのようにナッジを作り、ある種の誘因を与えていくかだと思います。

須賀:私自身、経産省の役人として仕事をしてきた中で、合理性や正しさがある程度自明で、価値判断をあまり求められないような政策については役人に任せてくれればいいと思っていました。一方で、待鳥さんがおっしゃるような「ナッジ」は、役人の立場では、踏み込みすぎている領域になります。価値判断を伴って、選択肢の中から、こっちにいくべきだと方向に示すことは政治の領域であり、総合的な判断して、踏み込んだインセンティブを作っていくことは、「政官」の関係の中でも「政」の仕事だと感じています。

待鳥:個々の具体的な政策に対する判断以上に、総合的な価値判断の体系や方向づけを、政党がパッケージとして提供すべきだと思います。ボルダリングというスポーツは、どういう選択をしていけば、ゴールまで最も合理的に到達できるかというコースが、デザイナーによって設計されています。ボルダリングにおけるコースデザイナーのような役割が、政党や政治家の役割のイメージに近いのではないでしょうか。

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【日本がグローバルの議論をリードするために】

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