こういう話を聞くと、もともと頭がよく、教育熱心な親に恵まれたからではないか、と思うかもしれない。はたして”宝槻メソッド”は、もとから賢い子どもでなくても、「効く」のだろうか。
今まで何度も同じ質問をされたことがあって、慣れているのかもしれない。宝槻さんからは「効きます」と即答された。「三男の友人で国語の偏差値が5だった子がいますが、僕らが勉強のやり方をアドバイスすると、本人も猛烈に努力し、彼も京大に入学しました」。
大切なことは3つ。ひとつめは「やる気を引き出す」こと。「勉強は面白い。目の前にはすばらしい世界が待っているよ」と語りかけ「頑張ろう」と思うように方向づける。2つめは「本人に合う学習方法を工夫して、それを大量にこなす」こと。先の偏差値5から京大に入った友人は、美しい文章を原稿用紙に1000枚も書き写した。3つめは「比べない」こと。
「今、何年生だからこれができなくてはいけない」という思い込みを捨てることだ。
そうは言っても、子どもがなかなかやる気になってくれない、勉強しろと言っても机に向かってくれない……という悩みを持つ親に、宝槻さんはこんなアドバイスをする。
「まずは、子ども自身がどうしたいか、質問から始めてみたらいいのでは。大事なのは親が結論を先に言わない、『~しなさい』と命令しないことです」
ビジネスで言えばコーチングの考え方を応用する。「僕にとって父は師匠みたいな存在でしたから、アドバイスは素直に受け入れることが多かったですが、教える立場である今の自分は、対話型で子どもの話を聞くように心掛けています。それが最も効果的と気づいたからです」。
京大3兄弟の次男、三男はどう考えている?
長男である宝槻さんは大学時代から子どもの教育にかかわる仕事に携わり、2年前に自分の受けた家庭教育を再現するような形で、探究学舎を開設した。次男と三男は会社づとめのビジネスマン。彼らは父親のユニークな家庭教育をどう見ているのか。そしてそれは今の仕事にどう生かされているのだろうか。次男と三男はこう語る。
「中1の頃、初めての英語のテストで60点を取ったら、午前0時過ぎに寝ているところを父親にたたき起こされて、殴られながら英単語を覚えさせられたことがありました。これで完全に英語アレルギーになりました。数年後、オヤジは『あのときはごめん』と何度も本気で謝りましたが、私は今後もこの件を許す気はいっさいありません。そのほかにも許せないことは多々あるし、感謝しているところも多くあります。
そんな中1のトラウマで英語嫌いになった私でしたが、父親流の家庭教育のおかげで、外国人とコミュニケーションを取ることへの恐怖感や遠慮はなくなりました。積極性や社交性を、小さい頃から父親の友人たちとの触れ合いを通して磨いていたのが大きかったと思います。ちなみに勤務先の新人研修でサンフランシスコに行ったとき、帰国子女を含めた英語をしゃべれる同期が現地の人とコミュニケーションを取れなかったのに、私ともうひとりの英語が苦手なはずの人が積極的に英語で話しかけていたことがあります」(次男)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら