女性管理職の働きがいは上司で決まる? 「2030」先進企業はこうしている

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店長の山本まゆみさん(51)は、就任して以来、会議を極力減らしてきた。他店では毎週行う会議も、ここでは月1だ。

「お客様が見えない所で会議をしても、間違った発想をしてしまう。女性は立ち話などの気軽なコミュニケーションが得意。店頭でやり取りしたほうが、瞬発力があるしスピーディーに修正できます」

係長集会も、机はとっぱらい、車座で行う。フロアの垣根を超えた企画がどんどん生まれた。例えば地下でアイスコーヒーを売る横で、グラスや器も一緒に並べる。通常、他の売り場のためにスペースを貸すなんて御法度なのだが、このおかげで、インテリアフロアにも寄っていこうかしら、というフロア間の客の流れが店内に生まれた。

所沢店は、入店した客が買い物をする買い上げ率が100%を超える。女性店舗になってから10%以上増し、他店と比べても突出しているという。その実績がやりがいにつながっている。

三井住友信託銀行 専門職にも女性を登用

「おっちゃんの仕事」

三井住友信託銀行の若本志保さん(44)が務める「財務コンサルタント」の仕事を、広報担当者はそう説明する。”財コン”の仕事で大きなウエートを占めるのが、遺言信託。一生をかけて築き上げてきた財産を、どう分割し、家族に残すのか、コンサルティングしながら遺言書を作成し遺言執行までの手続きを行う。大きな資産を持つ顧客に向き合う仕事。長らく、支店長経験者などベテラン男性が就いてきた専門職だった。

三井住友信託銀行財務コンサルタント 若本志保さん(44)

「信託銀行という業種は、不動産、年金、株式実務など、幅広い業務を扱います。働きがいの捉え方として、管理職を目指す上へのベクトルだけでなく、専門をつくり深めていくという横へのベクトルもあるんです」

人事部人材育成チーム調査役の笹はるみさん(46)が話す。5人しかいない女性財コンのうちの一人が若本さんだ。

1993年に、事務職で旧住友信託銀行に入行。03年、全国転勤型の総合職であるGコースにコース転換。仙台支店で勤務していたが、07年、結婚を機に地域限定型のリテール業務プロフェッショナルであるRコースに転換し、夫の勤務地であった首都圏勤務に変わった。このRコースがなければ、結婚と同時に辞めていただろうと若本さんは振り返る。もうひとつ、キャリアの転換点となったのが、入社7年目の市場金融部への異動。社内でどこかの部署から公募があれば、現在所属している部署や経験などに関係なく自由に応募できる「キャリアチャレンジ業務公募制度」を使った。自ら手を挙げて希望した分、プレッシャーが大きく、仕事に対する意識が変わったという。

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