女性管理職の働きがいは上司で決まる? 「2030」先進企業はこうしている

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積水ハウス トラブルでも「君を信じる」

2020年までに200人の女性管理職を、と目標を設定している住宅メーカーの積水ハウス。それでも比率は全体の5%。国の目標数値には遠いが、結果は出始めている。

社内では、設計などの技術職でも女性が活躍している。女性第1号の設計長が新関掌子さん(46)だ。東京中央支店設計課の18人を統括する。

積水ハウス東京中央支店設計長 
新関掌子さん(46)

だが、そんな新関さんも一生働くつもりで就職したわけではない。結婚し、03年に妊娠がわかったときには「辞めます」と申し出た。当時、身近に出産して復帰する女性などいなかった。女性課長から「どうして辞めるの? ご家族には相談したの?」と言われて家族に話してみると、みんなが応援すると言ってくれた。1年の育休を経て復帰してみると、新たな武器が身についていた。子育てをする上で便利な設備、家事動線などを熟知していた。09年に設計長の打診を受けたときは、戸惑いもあったが、会社側の配慮が背中を押してくれた。会社は、女性課長や信頼のおける上司を同じ支店に配置した。

「自信はありませんでしたが、チャレンジもせずに断ってしまうのはあとに続く女性たちにとってよくないと考え、引き受けました」(新関さん)

現在積水ハウスが力を入れているのは営業職の女性登用だ。年に一度、女性営業交流会を行い、優秀な業績をあげた人を表彰する。会では表彰される女性営業の上司も、「育ての親」ならぬ「育ての店長」として登壇する。「女性をうまく育てられる人材」を評価する体制を作っているのだ。

「育ての店長は期待のかけ方がうまい。トラブルがあったときでも『君の言っていることを信じる』などと声をかけ、その人の強みを生かした伸ばし方ができる。女性の部下に『覚悟はあるのか』と聞いたり、逆に甘く接したりする男性上司がいますが、部下への期待は伝わらず、働きがいを感じにくい環境になってしまいます」(ダイバーシティ推進室長の伊藤みどりさん)

そごう・西武 「女性店舗」で売り場活性化

そごう・西武は12年4月、西武所沢店を、店舗の正社員の大半を女性で構成する「女性店舗」にした。

「既存の組織に女性を入れても、自然と役割分担ができてしまう。思い切って新しい組織を作りました。2年経ち、所沢店で育った女性たちが他店でも活躍を始めています」(CSR推進室の田口邦子さん)

食品課長として抜擢されたのは、食品畑を歩いてきた佐佐木万恵さん(48)だ。デパ地下を一手にまとめる食品課長の立場は、それまでずっと男性の仕事とされてきた。生鮮食品は商品を店頭に出せる時間も短い。衛生面のチェック、品物の出し入れ、在庫管理などとかく作業量が多い。朝は早く、閉店時間ギリギリまで客がいるのもデパ地下だ。そのうえ物産展などでは海千山千の取引先を相手にしなければならない。それでも2年間やってこられたのは佐佐木さんが「戦友」と呼ぶ、店舗の仲間たちのおかげだ。

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