SASUKEのモデルは"スーパーマリオ"

「SASUKE」構成作家が語る制作秘話

モデルはスーパーマリオ?

この「SASUKE」の開発中、ボクの頭の中にはあるイメージ映像があった。人気ゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」の映像である。個性的なキャラクターが次々と難関を突破していくあのアクションゲームさながらに、屈強な生身の人間が難攻不落の全18エリアに挑むのだ。

そして、1997年の秋、屋内ロケーションで初登場した「SASUKE」は、その1年後、満を持して屋外に進出。緑山スタジオに、あの“鋼鉄の魔城”が出現することになる。“究極のサバイバルアタック”の始まりである。

あれから17年、「SASUKE」はテレビ番組としては長寿の部類に入る、決して短くはない歴史を積み重ねてきた。その最大の立役者が、全国各地から名乗りを上げた挑戦者たちであることは間違いない。

その間、“SASUKEオールスターズ”と呼ばれる常連出場者たちに芽生えた一種独特の連帯感や、その根底にあるライバル意識は、番組の中でもたびたびフィーチャーされてきた。集うたび、みな、半年ぶりの再会を喜び、「一緒にあの頂きを目指そう」と励まし合い、「でも、絶対に先には脱落しない」と己を奮い立たせる。

その一方で、実は番組の演出を手掛けるディレクター陣にも、同様の強烈なライバル意識が働いていた。せっかくの機会なので、この場を借りてその知られざる舞台裏にも触れておきたい。

この「SASUKE」には2人のチーフディレクターがいた。ひとりは現在も番組の演出を手掛けているイヌイ、もうひとりはモリヤマという。

最初の2回はいずれも秋に行われた「SASUKE」だが、第3回が初めて春に行われると、それからは年に2回、春と秋に開催されるのが恒例になった。そして、第5回からはこの2人のチーフディレクターが交互に演出を担当するようになり、スタッフの間では「春のイヌイ・秋のモリヤマ」がしだいに定着していった。

テレビの世界では、回数を重ねる大型特番は、毎回、決まったディレクターが演出を手掛けるケースが少なくない。人気番組には独自の世界観があり、たとえそれが半年に1度しか放送されない特番であっても、そのシリーズを通じて紡がれるストーリーのようなものがある。それをしっかりと描いていくためには、演出を担当するディレクターは固定されていたほうが何かと都合がよいからだ。

「SASUKE」にもストーリーがある。ゼッケン1番から100番へ、第1ステージからファイナルステージへ、そして前回から今回へ、今回から次回へと紡がれるストーリーがある。だとすれば、やはり演出の担当者はひとりに固定されていたほうがよかったのかもしれない。だが、意図したものかどうかはさておき、「SASUKE」は「春のイヌイ・秋のモリヤマ」の2トップ体制で回を重ねてきた。

しかもこの2人、ディレクターとしてのタイプが大きく異なる。部活動のイメージで言えば、サッカー部と剣道部くらい異なる。そんな2人が、春はサッカー部の流儀で、秋は剣道部の流儀で、交互に番組の演出を担当するのだ。そんな環境でお互いに意識しなかったといえば、それはウソになるだろう。花形のサッカー部と伝統の剣道部、ライバル意識が働かないわけがない。

一方のボクはといえば、春も秋も立場は変わらない。チーフディレクターの相談相手がいちばんの役割だ。だからこそボクには2人の思いがはっきりと伝わってきた。イヌイも、モリヤマも、前回をそのままトレースすることはしない。ライバルの担当回の各エリアをひとつずつ丁寧に検証していき、ステージごとの流れや視聴率の動きを徹底的に分析したうえで、つねによりエキサイティングなセッティングを模索し、さらには新エリアの導入を検討する。決して現状維持をよしとはせず、各ステージにいかなる新たな驚きを盛り込むか、その一点に心血を注いできた。それは2人のテレビマンとしての矜持と言ってもよいものだった。

「SASUKE」がこうして進化を続けてこられたのは、この2人の切磋琢磨があったからこそ、ボクはそう感じている。

「SASUKE」は、映画『フィールド・オブ・ドリームス』のようなファンタジーではない、そう書いた。紛れもない現実なのだ、と。しかし、どうだろう。一見、リアルに映る「SASUKE」こそ、実は空想の産物、非日常に出現したファンタジーなのではなかろうか。

挑戦者が己の限界を超えたとき、そこに空想の世界が広がり、跳ね返された者は、また現実に引き戻される。

ファンタジーはいつまでも原色のまま。だから「SASUKE」も色あせない。 

「SASUKE2014」はTBS系列にて7月3日(木)よる7時より放送(一部地域は18時57分より放送)
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