SASUKEのモデルは"スーパーマリオ" 「SASUKE」構成作家が語る制作秘話

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元々は筋肉番付の1コーナーだった

“If you build it, he will come”

映画のワンシーンのように、その声がボクらの耳に届くことはなかったが、制作者の意思とはかけ離れたところで、きっと何者かに導かれ、「SASUKE」は誕生した。しかも、これはファンタジーではない。紛れもない現実なのだ。

「SASUKE」がスタートした当時、放送作家であるボクはその母体となったスポーツバラエティ番組「筋肉番付」の構成を手掛けていた。

「筋肉番付」には大きく分けて、9枚のパネルの的当てに挑む“パーフェクト”系の種目と、9つのエリアの走破に挑戦する“完全制覇”系の種目という、2つの柱があった。

前者の代表は、巷のアミューズメントパークなどでもおなじみ、今でもたびたびテレビ番組でお目にかかる“ストラックアウト”だ。「筋肉番付」を人気番組に押し上げた最大のヒット企画といってよいだろう。

一方、後者には、逆立ちで9つのエリアに挑む“ハンドウォーク”、1輪車版の“ライク・ア・ピエロ”、竹馬版の“バンブーダービー”などバラエティに富んださまざまな種目があった。「SASUKE」はその流れをくんだ企画といえる。

そういった新種目の開発に際しては、9つのエリアを設定するために、その2~3倍ではきかない数のエリア案が検討され、スタジオで、会議室で、時にはこっそりと廊下の片隅で、連日、シミュレーションが繰り返される。その末にようやく新たな9エリアが完成するわけだが、そこで残念ながら採用されなかった案の中にも光るアイデアはあり、「SASUKE」の誕生には、その数えきれないほどのストックが大いに役立った。

それまで実施されてきた種目はスタジオ収録を前提としたものがほとんどで、狭いスタジオの中に設置するのは難しいという判断から採用が見送られてきたエリア案がいくつもあった。また、逆立ちや1輪車、竹馬といった特殊技能を要する種目ではさすがに困難だが、制約の少ない「SASUKE」でならば必ず生きる、そんなアイデアもたくさんあった。今や堂々と世界を独り歩きしている「SASUKE」だが、意地悪な言い方をすれば、最初は「筋肉番付」で不運にも日の目を見なかったボツネタを寄せ集めて開発されたものだったのだ。

ところで、番組史上最大スケールをうたう「SASUKE」だが、はたしてその全容はどの程度の規模のものなのか。今となっては容易に姿かたちが思い浮かぶものも、開発当時はイメージを共有するのも一苦労だった。

「とにかくデカいんだよ」

「デカいってどれくらい?」

「ビックリするくらいデカいんだって!」

「ビックリするってどれくらい?」

「だから、造ってみなきゃわかんないっつーの!」

このままでは、いつまで経ってもらちが明かない。では、せめて目安となるエリアの数だけでも定めようじゃないか。“パーフェクト”系ならば9枚のパネル、“完全制覇”系ならば9つのエリア、「筋肉番付」はいつも“9”という数字にこだわってきた。そこで、誰かがつぶやいた。「SASUKE」は史上最大なんだから、ちょうど2倍の18エリアではどうかと。

よし、決まった。「SASUKE」は全18エリアだ。

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